【新米学校司書さんが注意すべきこと 記事一覧】
・その1 4月1日までに知っておいた方が良いこと
・その2 学校組織と学校図書館について
・その3 とりあえずすべき目の前の仕事
・その4 学校司書の基本的な仕事
・その5 学校司書の立場
・新米学校司書さんに送るツイートまとめ
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「その6」に書いたように学校司書は「ひとり職場」ではありません。
学校内で教職員の一員であることもさることながら、
市内の他の学校図書館や公共図書館とも繋がりがあります。
他のそれぞれの立場の方々とどのように連携するか、
あらかじめ知っておくと良いかと思います。
(1)管理職の先生
校長先生、教頭先生、学校によっては副校長や教務の先生など、
だいたい職員室の「前の方」に座っている先生方が管理職の先生です。
管理職の先生方は学校運営対して最高責任を持つ先生方であり、
当然学校図書館の運営に関しても責任のある立場です。
図書だよりの発行の際には校長先生に
内容をチェックしていただく必要がありますし、
本や備品の発注などもチェックしていただく
必要が有ることもあります(学校によりけりですが)。
また、管理職の先生は教職員の関係を円滑にする立場でもあります。
仕事をする上で他の先生方との関係が上手くいかなかったりした場合も
管理職の先生方はその相談を受けるべき立場にあります。
また、生徒指導に関しても管理職の先生は相談を受ける立場にあります。
例えばとある学級で生徒指導に関して気になることがあるが、
担任の先生には諸事情により言いづらい…
そういった場合には管理職の先生に相談するのが良いでしょう。
ただし、そういったことに積極的に関わろうとしない
管理職の先生も中にはいます。
(2)図書館担当・司書教諭の先生
学校内には学校図書館を担当する先生がいることが多いです
(全くいない学校も中にはありますが…)。
また、学校図書館に関する一定の単位を取得し勉強している
「司書教諭」という資格を持った先生もいらっしゃり、
12クラス以上の学校では司書教諭として任命されています
(ただしこれも学校によって任命されていない場合もあります)。
ただし任命されていても図書館担当でないケースもあります。
いずれにせよ、もし赴任した学校に図書館担当の先生がいれば、
その先生は学校司書と一緒に学校図書館の運営をする立場に有り、
学校司書と一緒にどのように学校図書館を運営し
学校図書館教育を推進していくかを考える立場に有ります。
ただし、残念ながら現在の教員養成課程では
学校図書館教育に関する科目がなく、
例え図書館担当の先生でも学校図書館にお詳しくない先生がほとんどです。
また、司書教諭の先生でも学校図書館に明るくない場合も多々あります。
学校司書が学校の中で学校図書館教育に一番詳しい、
ということもままあります。
しかし、それでも図書館担当の先生がいる限りは、
学校司書一人で何でも決めて実行していくのではなく、
一緒に話し合いをして学校図書館への認識を深めてもらうのが良作だと思います。
ただし、図書館担当の先生は担任の先生をしており、
実際にはそんな時間があまり取れないかもしれませんし、
学校図書館のことを考えるヒマもあまりないかもしれません。
学校図書館に関してもっと詳しくなろう、
という意識もあまりお持ちでないかもしれません。
それでも、学校図書館運営に関して何か新しいことをしようと言う場合は、
図書館担当の先生に事前に話を通す必要はあります。
そうしなければ、学校図書館運営に関する責任を学校司書ひとりで背負うことになります。
(3)担任の先生・専科の先生
管理職の先生・図書館担当の先生以外の先生方との関わりは様々です。
担任の先生であれば図書の時間や調べ学習を一緒にすることになりますし、
委員会活動や行事等で係る場面も出てきます。
ただし、学校図書館教育に関して理解があるかどうかは先生によって様々です。
中高であればさらに教科ごとによっても異なってきます。
重要なのは「学校司書が何ができるのか」をアピールしていき連携してもらうこと、
そして学校図書館に理解のありそうな先生を見つけ協力してもらうことです。
初めて学校司書になっていきなりはわからないかもしれません。
まずは様子を見つつ、ひとつひとつの仕事を覚えながら、
徐々にできることを増やしていきつつ、
先生方との連携を考えて進めていくのが良いかと思います。
いきなり大掛かりな授業連携などはできません。
特に自治体として初めて学校司書を置いたところなどではなおさらです。
また、小学校では担任の先生以外に「専科の先生」もいます。
算数の少人数学級・音楽・図工・家庭科・養護教諭などの先生です。
こういった先生方とは授業等で連携するのはもちろんですが、
職員室で給食をご一緒することにもなります
(小学校の学校司書は職員室で給食を食べることがほとんどです)。
こういった先生方は複数のクラス・学年を教えているので、
それぞれの受け持つクラスの状況に詳しいことが多いです。
給食の時間にそういったコミュニケーションを取ることも
学校司書として全クラスに関わる上で役立ちます。
また、給食に関しては、赴任した当初は
お盆に給食を載せて各クラスに行って食べる、
というのも児童・生徒たちとコミュニケーションを取るのに良いです。
(4)ボランティアさん
学校によっては学校図書館にボランティアさんが入っているケースもあります。
本の修理や配架(本の整理)、飾り作りなどを手伝ってくださっていたり、
休憩時間の学校図書館の開館をしてくださっていたり
(学校司書が毎日勤務できない場合)、
読み聞かせボランティアのチームがあって
授業や休憩時間・朝の時間に読み聞かせを行っているケースもあります。
ただし、ボランティアさんはあくまで「ボランティア」であり、
司書資格を有する方もいらっしゃればそうでない方もいらっしゃり、
当然ながら学校図書館に関する専門知識を持ちあわせていない場合も多々あります。
学校司書はボランティアさんとは異なり、
学校図書館に関する専門知識を元に学校教育に深く関わる立場であり、
図書館担当の先生とともに学校図書館運営の中心となる立場です。
ボランティアさんの手助けは大変ありがたいものですが、
学校図書館は個人情報を取り扱う場所でもあり、
その関わり方には慎重にならなければならないこともあることを
学校司書は知っておく必要もあります。
また、ボランティアさんの管理等を誰がするのか、という問題もあります。
雇用条件の厳しい学校司書には負担が大きすぎる場合もあります。
そういった場合は管理職の先生等にお任せするのも必要かと思います。
(5)他校の学校司書さん
自治体によっては全小中学校に学校司書を配置していたり、
1人2校以上兼務で学校司書を配置していたりと様々ですが、
たった1人だけ学校司書を配置している、という自治体は少ないと思います
(学校が小中1校しかない、という場合は1人かもしれませんが)。
以前から学校司書を配置している自治体であれば、
先輩の学校司書さんなので学校図書館の運営や
各学校の状況、図書館システムの使い方などにお詳しいでしょう。
その1で書きましたが、連絡を取る手段を確認しておき、
色々と教えていただきましょう。
また、自治体によっては学校同士で資料の貸し借りをしているところもあります。
図書館システムを通じて他校の本の所蔵状況が確認できたり、
図書館システムを使って貸出依頼ができるところもあります。
「公共図書館との連携」で後述しますが
そういった資料の運搬をしてくれる自治体もあります。
さらに、学校司書同士で定期的に集まって研修や連絡会を
行ったりしている自治体があったり、
先輩司書さんたちが新任司書さんに新任研修を行っているところもあります。
何にせよ、先輩司書さんたちがいる場合は大いに頼りにしましょう。
ただし、「初めて学校司書を配置する自治体」はこの限りではありません。
それまで学校司書を配置しておらずゼロからのスタート、
誰も市内の学校図書館の状況に詳しくない、というケースもあります。
ただ、そういった場合でも中には学校司書経験者がいるかもしれません。
学校司書経験者の方がいればその方に助けてもらいつつ、
横の連携=学校司書同士の連携をしっかり取って、
どのように学校図書館を推進していくかを考えていきましょう。
この場合、学校司書だけでなく先生たち
(例えば市の教科研究グループの国語教育担当グループの先生など)や
教育委員会の担当者、公共図書館の方も巻き込んで
市全体で学校図書館のことを考えていければベストです。
しかし、もし学校司書経験者すらひとりもいなかったら…
ネット上には学校図書館運営に関するノウハウを公開しているサイトがあります。
・SLiiiC 学校図書館プロジェクト
http://www.sliiic.org/
・青森県教育委員会「学校図書館活性化マニュアル〜できることからはじめよう〜」
http://www.pref.aomori.lg.jp/bunka/education/gakkou-toshokan_manual.html?
ref=rss
・大分県立図書館「学校図書館ハンドブック」
http://library.pref.oita.jp/kento/information/paper-publication/handbook/
・札幌市教育委員会「生かそう、使おう学校図書館ー学校図書館活用の手引-」
http://www.city.sapporo.jp/kyoiku/top/tokusyoku/dokusyo/21dokusyo.html
・那覇市立教育研究所「那覇市立学校図書館業務マニュアル」
http://www.nahaken-okn.ed.jp/kumoj-es/01_gakkou-annai/13_tosyo/keslib/sishoken/
・岡山県高校図書館司書部会「学校図書館実務の手引き」
http://okayama-hslibrary.com/?%E5%AD%A6%E6%A0%A1%E5%9B%B3%E6%9B%B8%E9%A4%A8%E5%AE%9F%E5%8B%99%E3%81%AE%E6%89%8B%E5%BC%95%E3%81%8D
・子ども読書県しまね 学校図書館(島根県立図書館)
http://www.lib-shimane.jp/dokusyoken-shimane/s-library/index.html
※学校図書館に関する用語集や改装事例有り
・ほんとも!〜学校図書館おたすけサイト〜 ※当サイト
http://hontomo.net/
また、書籍としては
学校図書館改装に関する書籍ですが、
学校図書館の役割や各学校図書館の状況分析についての記述が
初めて学校図書館で働く人にも役立ちます。
理論的・制度的な観点を学ぶのならば塩見先生の著書がおすすめです。
学校図書館と授業との連携に関してはこの4冊が、
探究型学習の意義や授業づくり、資料準備について役立つかと思います。
また、僭越ながらTwitterにて当サイト管理人が日々情報発信をしていますので、
そちらもご参照ください。
Twitter上には自分に限らず多くの学校司書さんが情報発信をされています。
https://twitter.com/typhoon516
(6)公共図書館
公共図書館がある自治体では、
公共図書館が学校図書館をサポートしていることも多いです。
授業で使用する資料等の貸出、
それも通常の利用者と異なり長い期間・多くの冊数を
貸し出してくれる場合が多いです。
また、Web上で資料の予約ができたり、
あるいはFAXやメール・電話で資料準備やレファレンスを
受け付けてくださるところもあります。
さらに、自治体によっては定期的に公共図書館や
他校の図書館から借り入れる本を配達してくれる自治体もあります。
そして、公共図書館の司書さんたちと学校司書とで
合同で研修等を行っている自治体もあり、
公共図書館の司書さんが学校図書館について詳しい場合もあります。
学校司書として配属されたら、
まずはその自治体の公共図書館に行って
挨拶をしたり学校図書館に関してお話を聞かせていただくのも
良いことだと思います。
以上、6回に渡って「新米学校司書さんが注意すべきこと」として、
これから学校司書として働く上で知っておくと便利なこと、
知っておいてほしいことを書きました。
「こういうことも書いておいた方が良い」
「こういうアドバイスも必要では」ということがあれば
コメント等でお知らせいただけるとありがたいです。
最後に、ここまで読んでくださった皆様、
そして新米の学校司書さんたち、
どうか無理せずできる範囲で頑張ってください。
皆さんのご活躍を祈念いたします。