エル・ライブラリー主催・工房レストアさんによる
「紙資料修復ワークショップ」に参加しました。
エル・ライブラリーとは大阪にある大阪産業労働資料館(サイトはこちら)。
労働組合や企業・市民団体などの貴重な歴史資料を収集・保存している資料館です。
このエル・ライブラリーで保存されている資料を
工房レストアさん(サイトはこちら)が修復されており、
その御縁でこの「紙資料修復ワークショップ」が開催される運びになったとのこと。
学校図書館では毎日資料の修理に追われているので、
これも良い経験になるのでは…と参加させていただきました。
このワークショップで体験させていただいたのは
「漉きはめ」と「裏打ち」と「和綴じ」。
「漉きはめ」と「裏打ち」は1枚ものの資料の破れや虫食いを修復する方法。
「漉きはめ」は紙漉きのように資料の穴に紙の原料液を漉いて修復する方法です。
一方、「裏打ち」は資料の裏に紙を1枚貼り付けて修復する方法。
「和綴じ」は学校図書館でもよく行う、本の背を糸で止める修復方法です。
「漉きはめ」については工房レストアさんのサイトに説明があるので、
そちらをご覧いただければわかりやすいかと思います。
「漉きはめ」で使用する紙原料液の原材料。
上から「楮」「雁皮」と「楮」を漂白したもの。
修復する資料によって使い分けるそうです。
また、液に使う水は水道水を業務用のろ過器を使ってろ過しています。
水道水の塩素などの成分が資料を劣化させてしまうからです。
「漉きはめ」に使う紙原料液。
紙漉きで使う原料液よりも薄く作られています。
これは「裏打ち」で使う、修復資料の裏に貼り付ける和紙。
この糊を使って貼り付けます。
「漉きはめ」も「裏打ち」もまずは「レーヨン紙」というものに
修復資料を水で固定する作業を行います。
文章で書いてもなかなかわかりづらいので、動画でご覧ください。
この作業のあと、「漉きはめ」はさらにレーヨン紙を1枚重ねて、
レーヨン紙で修復資料をサンドイッチします。
「裏打ち」は修復資料の上にさきほどの写真の和紙を貼り付けます。
「漉きはめ」の作業は動画を撮っているのでご覧ください。
レーヨン紙でサンドイッチするのは、修復資料を濡らして
刷毛で皺や折り目を伸ばすためです。
レーヨン紙はかなり頑丈で、多少のことでは破れず
修復資料を刷毛から保護します。
皺や折り目を伸ばしたらレーヨン紙を1枚剥がします。
これで、レーヨン紙の上に修復資料が載った状態に。
これを手で持って巻き簾の上に布を載せたものに載せます。
この時、今度は巻き簾の布に修復資料が載るように、裏返して載せます。
再度刷毛でレーヨン紙の上から皺を伸ばしたら、
レーヨン紙を剥がして、これで「漉きはめ」の準備完了。
「漉きはめ」の作業です。
紙漉きのように修復資料に紙原料液をかけて、
穴を原料液で埋めていきます。
余分な原料液はバキュームで下から吸い取ります。
さらに別の機械で水分を吸い取ったあと、
乾燥台に乗せて乾燥させます。
通常なら一晩自然乾燥させるのですが、
この日は修復した資料を持ち帰らせてくださるために、
機械で乾燥してくださいました。
「漉きはめ」で修復した資料。
遠目に見るとどこを修復したのか一見わかりません。
近づいて見ると、虫食いのあとにうっすら新たに紙が埋まっています。
こちらは「裏打ち」で修復した資料。
「漉きはめ」と見た目では違いがわかりませんが、
触ると「裏打ち」の方が分厚くなっているのがわかります。
和綴じ体験もさせていただきました。
「漉きはめ」も「裏打ち」もそうでしたが、
工房レストアの社員さんお二人の説明がすごくわかりやすく、
どれも上手く修復することができました。
このワークショップ、小学生の体験学習でしていただいたら
子どもたちは楽しんでしそうだなぁ、と感じました。
大人がやってもかなり楽しかったです
(個人的にこういう作業が好きというのもありますが)。
今回このように修復作業を体験させていただいたことは
もちろんとても良い経験になったのですが、
工房レストアさんの資料修復への想いを
聞かせていただいたのが何より貴重な経験となりました。
文化財などの貴重な資料に限らず、
市井の人々の「個人的に想いのある資料」も
「貴重な資料」として別け隔てなく修復する、
「紙文化資料の町医者」としての仕事への矜持が何より心に残りました。
ウチにある個人的に大変思い入れのある
B’zの「The 7th Blues」の新聞広告も
工房レストアさんで修復していただこうと思います。
ワークショップが終わったあとは、
工房レストアさんならびにエル・ライブラリーのお二人と
参加者の皆様とで懇親会が開かれました。
大正区といえば沖縄料理!
大阪でこんなに美味しい沖縄料理が食べられて良いのだろうか…
というくらいどの料理もとても美味しかったです。
また、懇親会では工房レストアさん、
そしてエル・ライブラリーの谷合館長の熱いお話も聞かせていただき、
大変勉強になりました。
「千年後を考えて仕事をする」という谷合館長のお言葉は
学校図書館に勤務している身としてはなかなか思い至らないところで、
自分も千年ごとは言わずとも、子どもたちの未来を考えて
日々大切に仕事をせねば…と自分の身を振り返りました。
ワークショップ・懇親会ともにとても濃密な半日を過ごすことができました。
ワークショップを主催してくださったエル・ライブラリーの皆様と
お休みにワークショップで貴重な体験をさせてくださった
工房レストアの皆様、ありがとうございました!