月別アーカイブ: 2017年5月

資料の発注管理(発注書、回覧、購入冊数管理)

みなさんのところでは、資料の発注(本の注文)、そして発注の管理をどのようにされていますか?
FAXで注文書を送っている、メールで送っている、図書館システムからできるetc…色んなところがあるかと思います。
私の学校では注文は全て図書館システムからでき、注文する本のリストアップやリスト作り、発注額の確認もできました。
ただ、出版年が古い資料は書誌データが初版の時のままで価格が古いままだったり価格が入っていなかったり、どうしても誤差が出てしまうため別途Excelで購入した資料リストを作成し予算の残額を確認していました。

このリストの項目は左からこのようになっています。

・発注 → 発注済みならば「済」を入力
・書名
・著者
・請求記号
・出版者
・冊数
・本体価格
・税込価格
・備考 → 課題図書、授業関連、児童リクエスト、教員リクエストなどを入力
・納品 → 納品・検品が済んだら「済」を入力
・伝No. → 書店の請求書伝票の番号を入力(あとで確認しやすいように)
・分類 → その資料の類を入力、絵本はE、マンガはM
・シリーズ → シリーズものの場合は「シリーズ2類」「シリーズ9類」「シリーズE」など入力
・調べ学習 → 調べ学習に使用する資料の場合学年・テーマを入力
・対象学年 → おおまかな対象学年を入力…するつもりが実際には書く余裕無し

予算管理だけならば伝No.までの項目があれば良いのですが、新刊の分類等の比率をリアルタイムで調べるため、分類以降の項目も設けていました。
というのも、このリストの最後には

このように新刊の分類構成を調べる表を入れています。
この表で出しているのは

・前年度の新刊における各分類の購入割合(前年度のデータを入力)
・今年度の新刊における各分類の購入冊数・購入割合
・今年度の新刊各分類におけるシリーズものの資料の購入冊数
・今年度の新刊における各学年・テーマ毎の調べ学習に使える本の購入冊数
→昨年度までの所蔵冊数、そのうち買い替え(廃棄)対象冊数、必要冊数、それらを元にした不足冊数

図書館システムでも統計機能を使ってこれらのデータを出すことは可能ですが、図書館システムの統計機能はデータを取るのに手間がかかったり、出てきたデータがExcelで複雑な表になっていてそのままでは使いにくいということもあり、新刊リストにこの機能を持たせて使っていました。
ただ、これらの数値はあくまでも単なる新刊冊数のカウントに過ぎず、実際には数年間の収集状況や既存の蔵書の所蔵状況等、様々な要素とともに新刊購入の参考にする必要があるかと思います。
というわけでこのExcelファイル(実際に新刊データを入力しているサンプルデータとひな形データ)をアップしますが、ご利用には各館の状況を鑑みてご活用ください。
使用方法は下画像の通りです(雛形ファイルにも使用方法シートがあります)。

<サンプルデータExcelファイル>

<ひな形データ>


学校図書館引き継ぎ資料の作成例

2015年度に退職する際に引き継ぎ資料を作成しました。これが結構な手間と労力でした…普段からその時に備えて準備しておけば楽だったのでしょうが、ゼロから作るのは大変な作業です。
しかし学校司書の雇用は不安定で普段から引き継ぎ資料を作るというのは難しく、一方で突然来年度から異動、あるいは退職というのも学校司書には多い話です

そこで、ほんともが退職の際に作成した引き継ぎ資料を公開いたします。
ただ、そのまま公開するのはさすがに学校等の事情がまるわかり過ぎるので、削るところは削って、しかしなるべく原型を留め各項目で注意すべき点や学校の事情や規則に合わせて変更すべきところなどもわかりやすくしたつもりです。

頁数が40ページを越えてしまったので、WordファイルそのままのものとPDFファイルにて公開いたします。

作成の際には以下の資料も参考にいたしました。

引き継ぎ資料に果たしてどこまで書くのかというのが難しいところですが、私の場合は「司書資格や司書教諭資格を取ったばかりの大卒で図書館勤務経験もまったくない人が来た場合」を想定して、学校図書館の業務に限らず、出張や有給休暇の取得方法といったことまで載せました。

なお、データサイズも大きいのでダウンロードする前に内容がわかるよう、目次を書いておきます。

1.司書教諭・図書館担当の先生の確認
2.自治体全体でのマニュアルについてについて
3.図書館システム操作マニュアル
4.TOOLi-Sのログイン方法
5.問い合わせ先
6.メールアドレスについて
7.図書館の鍵、司書室(図書館準備室)、図書館以外の教室の鍵について
8.学校の鍵について
9.出勤時の出勤簿(タイムカード)について
10.学校組織について
11.プリンターについて
12.図書館のデスクトップPC、ノートPCについて
13.図書館デスクPCについて
14.新年度最優先ですべきこと
(1)クラス名簿の入手
(2)図書館開館と図書の時間をいつから開始するかの確認
(3)新1年生の利用者登録
(4)新2~6年生の転入生登録
(5)新2~6年生のクラス変更
(6)クラスが増えた際のクラス貸出の利用者登録
(7)利用者バーコード(台帳・カード等)の印刷
(8)1回目の図書の時間のオリエンテーション・読み聞かせの準備
(9)1年生のオリエンテーション
(10)新任・転任先生向けオリエンテーション
(11)2017年度中の予約と予約確保本の連絡
(12)◯◯市立図書館の団体向けサービス利用申込み
(13)◯◯分館への移動手段
(14)図書館システムの休館日設定
15.勤務時間について
16.残業について
17.休暇取得について
18.出張について
19.学校間配達便について
20.貸出・返却・予約方式
21.開館時間
22.閉館時の注意点
23.長期休暇中の開館
24.図書の時間について
25.図書の時間の流れ
26.図書の時間の時間割変更について
27.利用規則
(1)貸出規則
(2)長期休暇(夏休み、冬休み)の貸出規則
(3)予約・リクエスト規則
(4)予約本の連絡方法
(5)資料紛失・汚破損
28.選書について
29.除籍について
30.図書費について
31.選書リストのチェックについて
32.予算管理について
33.発注方法について
34.図書の発注先について
35.新刊の受入について
(1)現物・価格・装備・乱丁の確認
(2)蔵書印
36.本の付録
37.2018年度に購入して欲しい本
38.分類について
39.分類シール(請求記号シール)について
(1)0〜9類(小説以外)の分類シール
(2)9類小説の分類シール
(3)絵本の分類シール
(4)文庫の分類シール
(5)新刊の別置シール
40.図書館システムの所蔵場所設定
41.雑誌について
42.新聞の受入・整理について
43.パンフレット・リーフレット資料の整理について
44.消耗品予算について
45.調べ学習・グループ活動室について
46.学校図書館の組織的な位置付けについて
47.情報教育研究部会について
48.各学年の探究型学習の取り組みについて
49.卒業研究について
50.情操部会について
51.図書委員会について
52.児童の読書傾向について
53.掃除について
54.廊下の掲示板について
55.公共図書館との交流研修について
56.◯◯市立図書館からの資料の借り方
(1)Web予約して借りる
(2)本の配送便で資料を借りる・返却する
(3)◯◯市立図書館の方にレファレンス依頼をする
(4)テーマ別パックを利用する
(5)百科事典を利用する
(6)学校図書館支援ライブラリー
(7)◯◯市立図書館から借りた本をクラス貸出・児童に貸出する場合
57.他校学校図書館からの資料の借り方
(1)他校へ資料貸出を依頼する流れ
(2)蔵書管理システムでの依頼、受入、返送
(3)他校から借りた本を本の配送便で返送する
(4)他校からの貸出依頼
(5)蔵書管理システムでの他校からの依頼の確認・手続き方法
58.他公共図書館等から本を借りる
59.行事等の役割分担、校内の役割分担について
60.親睦会について
61.おわりに


小学生新聞記事の保存と整理

みなさんの学校図書館に新聞はあるでしょうか?
小学校ならば小学生新聞、中学校ならば中学生新聞、高校ならば一般紙を置いているところも多いでしょうか。
農業高校や工業高校などであれば専門紙を置いているところもあるかもしれません。
ただ、実際には予算化されていない、あるいは予算が足りないなどを理由に実際には購入されていないところの方が多いかもしれません。

さて、その新聞記事はみなさんどのように活用されているでしょうか?
日頃児童・生徒が読むのはもちろんのこと、新聞は探究型学習の情報源として活用することもできます。
ただし、活用するためには活用できるような形での保存・整理の作業が必要です。
一般紙や専門誌ならば新聞社が提供しているデータベースがありますが、小学生新聞については新聞社はデータベースをほとんど提供していません。
そこで、今回は私の学校での新聞記事の保存・整理方法をご紹介します。

私の学校で取っている小学生新聞です。
パンチで穴を開け、穴の部分をホチキス止めして補強しています。
私の学校図書館では過去2ヶ月分の小学生新聞は新聞架に半月毎に綴じて保存し、それより以前のものは同じく半月ごとに綴紐で綴じて保存していたためです。
しかし、この「半月毎に綴紐で綴じて保存」という方法では活用など全くできません。
何月何日にどんな記事が載っていたかなど全く探しようがありませんし、例え探せたとしても半月毎の束から目的の日付の新聞を探し出して綴紐を外して、また戻して綴じて…などという作業は非効率です。
また、この「穴あけしてホチキス止めする」というやり方は後々大変な手間を増やしました…。
そもそも、過去2ヶ月分の新聞記事を新聞架で置いておくのもあまり意味は無いように思われました。
前日〜2ヶ月前の新聞記事を見返す児童はほぼ皆無です。一方、新聞は溜めてしまうとどうしても整理が億劫になりがちです。過去の新聞はせいぜい1週間分くらい置いておいて、それより前のものは随時後述の方法で毎日1日分ずつ整理していくほうが良いように思いました。

さて、前置きが長くなりましたがこの新聞記事の整理方法です。基本的にはスクラップとファイリングです。さきほどの写真の一面記事を保存していきます。

使う道具はラジオペンチ、カッターナイフ、ハサミ、B5より少し小さめに切った厚紙です。ただ、ラジオペンチは場合によっては不要です。

まず、ラジオペンチでホチキスを外していきます。この作業はかなり手間です。
私が自校の新聞の整理に取り掛かった時、新聞記事は過去5年分ほど溜まっていました。その全てを保存するわけではありませんが、それでも何百日分という新聞のホチキスを外すのにとてつもない時間がかかりました。新聞をスクラップで保存するのであれば、ホチキス止めはオススメしません。

ホチキスを外したら、次に一面記事だけを切り抜くために新聞の真ん中部分をカッターナイフで切っていきます。

一面だけを切り離しました。

次に、一面からさらに必要な記事だけを切り抜いていきます。丸々そのまま保存しても良いのですが、ファイリングする際に嵩張ってしまうので必要な部分だけにします。

このように記事のみを切り抜きますが、ただし日付がなるべくわかるように日付と何面かがわかる部分は残します。記事の場所などによってどうしても残せない場合は、ボールペン等で余白に年月日と何面かを書きます(朝夕刊があるばあいどちらなのかも)。これは、探究型学習等で引用する場合に必ず必要になるからです。

切り抜きが終わったら、ファイリングのために記事を折りたたんでいきます。折りたたむサイズは、書架に入るサイズのファイルの大きさに折りたたみます。ファイリングした新聞記事は新聞記事だけで固めて置くのではなく、各分類の本と一緒に置いた方がより活用されやすいからです。

今回はB5サイズに折りたたむのですが、この時に役立つのがB5サイズより少し小さめに切り抜いた厚紙です。写真のように、厚紙を記事の裏側にあてて折りたたんで行くと素早く折りたためます。また、ファイルに入れる際にファイルからはみ出さないように、目的のサイズより厚紙を少し小さめにしています。そうすると、ファイルのクリアポケットにすんなり入るからです。

下側を上に折りたたんで…

さらにB5サイズになるようサイドを折りたたみます。

B5より少し小さいサイズに折りたためました。なお、折りたたむ時はなるべく記事の見出しが見えるように、あるいは何の記事がパッと見てすぐにわかるように折ります。ファイルの中から目的の記事を素早く見つけられるようにするためです。

さて、スクラップまでで新聞記事の保存・整理の下準備が終わりました。ここからさらに、新聞記事が「活用されるように」もうひと工夫をしていきます。

Excelで保存した記事の簡単な目録を作成します。項目は

・No.=記事管理のための通し番号を各記事に付ける
・発行年月日
・新聞名
・記事名
・面数=記事が載っていた面の番号
・ジャンル
・備考

ジャンルについては各学校のカリキュラムや学校教育方針、学習指導要領によって変わると思います。私の学校では以下のような感じでした。

このジャンルについては随時再考していく必要があると思いますが、基本的には「出版物でカバーできないジャンル」「最新の情報が必要なジャンル」については特に保存の必要があるように思います。また、ジャンルに加えて「記事をいつまで保存するか」も毎年検討しなければなりません。本として既に出版されていれば記事の保存はほぼ必要ないかと思いますが、そうでない場合は、その記事は数年後、数十年後にどのような意味を持つか?ということを考えて保存するべきかどうかを決める必要があるように思います。

「備考」蘭は後で児童や学校司書が検索する際にその記事が見つけられやすいようなキーワードや入れておいた方が良いと思われるキーワードを入力していました。繰り返しになりますが保存した新聞記事は活用されないと意味がありません。「活用される」ためには、児童や生徒、あるいは後任の学校司書がその記事を探せるように、探しやすいようにしておく必要があります。児童や生徒、学校司書がその記事を探す際にどんなキーワードで探すか、あるいはどんな単元でその記事を活用するかなどを考えてキーワードを入力しておきます。実際にはジャンルでだいぶ記事は絞れると思いますし大抵見つけられると思うのですが、それでも念のためキーワードを付与しておきます。

さて、このExcelのデータですが、単に目録の役割だけを持っているわけではありません。

実は別シートにマクロを組んでいて、決められたセルに先程の記事のNo.を入力して印刷すると…

このように書誌情報が載ったB5サイズの紙が印刷されます。この紙を、

新聞記事をファイリングする際に記事と一緒に入れておきます。こうすることでふたつのメリットが生まれます。

(1)新聞記事を抜き取ったあと、元に戻す際に入れる場所がわかりやすくなる
(2)新聞記事を引用する際に書誌情報がわかりやすくなる

こうしておけばあとあと探究型学習で新聞記事を利用した際に片付けたりレポート等を書く場合に一手間ふた手間省くことができます。

最後に、ファイルに挟んで背に見出しを付けます。これを各分類の棚に置いておけば、探究型学習で本を探すのと同時に新聞記事も探すことができます。
新聞社の方がこの新聞記事の保存を取材に来られたのですが、何年も前に書いた過去の記事と最近の記事に繋がりができたり、全然違う記事と思っていたものが、図書館の分類によって記事に関連性が生まれている、と関心されていました

本当はこのあとさらに市全体の目録システムに登録して全市的に利用できるようにしたかったのですが、その際の目録の作成方法のルール決め等を提案しようかと思っていたところで退職と相成りました。

………ただ、この作業をしながら一方で「もっと効率的なやり方があるのではないか」という気がしないでもありません。

例えば、記事のデータはおそらく新聞社に残っているはずです。その記事をデータベース化すればこういった作業は不要になります。大人の新聞は既にデータベースがあり活用できるので、同じようなものを新聞社さんが用意してくれれば…おそらく採算が取れないのでしょうが。
また、この作業を1紙だけするのに関しても疑問がありました。小学生新聞は記事内容にそれほど差異はないかもしれませんが、それでもやはり複数の新聞記事を比較するために、1紙だけでなく数紙を保存し比較できるようにするのが理想かと思います。しかし、それだけの作業を図書の時間を週に何十時間もこなしながらというのは時間的に不可能です。学校図書館支援センターなどで一括して行うか、もしくは図書の時間も含め教員・司書教諭・学校司書がどのように情報教育や読書教育に関わるかを再考する必要があるように思いました。理想は各新聞社が協働で児童生徒向け新聞記事検索・比較データベースを作ってくれると良いのですが…

最後になりましたが、退職前に駆け込みで作った朝日小学生新聞の記事目録のExcelファイルを誰でも利用できるようにアップしています。ジャンルは上記のジャンルで、おおよそ2010年4月ごろ〜2016年3月31日を対象にしています。ファイリング用の書誌情報印刷機能もあります。よろしければご活用ください。

最後になりますが、退職直前に新聞整理を手伝ってくださった某学校司書さんに御礼申し上げます。一人では到底できませんでした…ありがとうございました!