2月」カテゴリーアーカイブ

鬼の首引き

都に向かう若者の前に突然鬼が現れて、若者は捕まってしまいます。鬼はその若者を食べようとするのですが、「まてよ。ウチの姫さんはまだ人間を食べたことがない。お前、わしと姫さんとどっちに食べられたい?」と聞いてきます(どっちも嫌だ…)。若者は姫さんの方を選びます。しかしタダで食われるのはかなわん!と若者は鬼の姫さんに勝負を挑みます。勝負は腕相撲や足相撲。鬼の姫だからさぞかし強いのだろう…と思いきや、意外にも弱くて負けてしまう姫さん。最後は若者と他の鬼たちとの首引き勝負ですが、若者はこれまた知恵を巡らせ…

よく見ると登場人物たちの表情が面白い。若者は知恵を巡らせるだけあってなかなあ鋭い表情をしています。それに対し負ける鬼の姫さんは案外かわいい(笑)鬼は若者に騙されてしまいそうな、悪い顔してるけどちょっと間抜けそうでもある顔…。井上洋介さんは大胆なタッチの絵ですが、細かいところはすごく繊細でお話によく合っています。


鬼のうで

都で大暴れしていた酒天童子ら鬼の一味を退治した源頼光たち。しかし、一匹の鬼がこっそり逃げて、羅生門で女を100人もさらっていた。そこで、頼光の家来で最も強い、渡辺綱が退治にでかけ、見事鬼のうでを切り落としたが…

「そうれそれそれ そのむかし」「やんややんや」など、噺家のような文体が実に面白く話し手としても読みやすいのですが、それは赤羽末吉さんの文と絵が実に物語に上手く起伏をつけているからでもあります。絵は白を基調としているのですが、例えば渡辺綱が羅生門に向かうシーンでは、渡辺綱を細い筆の線で描き、ひとつめの風が吹くところでは風を少し太めの薄墨で数本、次の雨の滴りは渡辺綱と同じ線でごく控えめに、そして次の黒雲と松が出てくるところでは色を濃くして描く大きさも大きくして、最後の稲妻が光るところで渡辺綱を灰色で塗り、「いかにもこれから何か起こるぞ」という雰囲気を醸しだしています。しかし、次のページをめくると…何も起こらない。鬼は出てきません。渡辺綱の油断した気持ちを表してか、そのページに書かれている渡辺綱も線がふにゃふにゃ。しかし、そのページをめくった瞬間不意に出てくる音は実に力強い線え勢いのあるタッチ、画面をはみださんばかりの鬼の迫力。あわれ腕で握りつぶされた渡辺綱が描かれる次のページでは、あえて背景を血をイメージするかのような色。この色は代赭かな?とまぁ、実に絵が物語と連動していて、読み手も聞き手も物語にぐいぐい引き込まれるようになっています。これぞ絵本、という本です。


狂言えほん せつぶん

はるばる中国の蓬莱山から日本やってきた鬼。さすがに疲れたので、どこかで休もうと思ったところ、明かりの灯る一軒の家があった。中には美しい女の人がひとり、鬼はたちまち女の人に惚れてしまい、なんとか嫁にしようと口説くが、女の人は鬼が恐ろしくてたまらない。鬼は手を変え品を変え惚れさせようとするけれど…

狂言の節分をもとにした絵本。女の人を口説く鬼の様子がとてもひょうきんです。鬼が怖くて怖くてしょうがない女性と、それに全然気付かず女も自分に惚れてあるなと勝手に勘違いする鬼の間抜けさのギャップが面白いです。ただ、この機微を捉えるのはちょっと難しそうかな?中学年〜高学年向けかもしれません。


鬼が出た

読み聞かせには向いていませんが、「鬼」の伝承について、子ども向けにとてもわかりやすく、そして多くの写真や資料を元に紹介されている本です。日本人にとって「鬼」がどういった存在であったかを縁起絵巻や仏像や各地の伝承などを元に正確に分析されていて、節分の固定的な鬼のイメージを払拭してくれます。節分の読み聞かせと一緒にどうぞ。


オニの生活図鑑

この本は読み聞かせには向いてないのですが、節分の読み聞かせで一緒に紹介するとウケること間違いなし!鬼の村、衣服、食べ物や仕事、お祭りや結婚式や成人式まで、鬼の風習や生活を余すところなく絵と文で紹介しています。「山オニ族」「海オニ族」と部族ごとに分けて紹介されているのにも驚きです。そんな部族の違いがあったとは…。

前書き・後書きには、今はもうオニは姿を消してしまったけれど、各地の伝承や史跡を元に調べたこと、調べれば調べるほどオニの生活の面白さがわかったこと、また人間たちがオニの「強い」というイメージを悪用して悪者扱いしてきたことなども書かれています。惜しむらくは、その「どうやって調べたのか」の参考文献や史跡などのリストも載せて欲しかった…


オニたいじ

毎年節分の豆まきでオニのふりをしたおじさんを退治していた豆たち。しかし、今年は本物のオニを退治しよう!と飛び出して行きました。泥棒や密猟者など、世界中にいる「本物のオニ」たちをいざ退治!

「鬼」を災いと捉えるのではなく、「鬼と化した人間」と捉えているところが面白いですね。ラストのオニには驚きですが(笑)けど、ラストのオニ、人間の中にもいますよね。


おばあちゃんのえほうまき

今日は節分。おばあちゃんと孫のきりちゃんはふたりでえほうまきを作ります。玄関のヒイラギにはイワシの頭を飾って、えほうまきには七つの具を入れて…もちろん豆まきもします。今年一年、幸せに過ごせますように!

この季節の行事を紹介する「おばあちゃんの…」シリーズ、今回は節分です。恵方巻きは関西の習慣だそうですが、長年食べているけれど中身の具の数にまで意味があるとは知りませんでした。暦の話、ヒイラギやイワシの頭の意味、恵方巻きの食べ方や豆の食べ方まで、節分の行事の行い方とその意味をお話としてスムーズな流れの中に自然に挿入されていて、あまり説明的になっておらず、読み手として読みやすそうだし聞く子どもたちにも自然に頭に入りそうです。おばあちゃんのお願いごとが面白い(笑)


ロボットおに

毎年節分の豆まきで子どもたちに負けてしまう鬼たち。今年こそは子どもたちに勝つぞ!と「ロボットおに」を作りました。果たして勝負の行方は?

節分で実際に鬼たちと子どもたちが対決している、という面白さもさることながら、怪力自慢である鬼たちが勝つためにロボットに頼る、という鬼なのになんだか弱々しい設定が普通の鬼が出てくる絵本とは異なって面白いですね。さぁ、鬼たちはロボットを駆使して勝つのでしょうか?それは読んでのお楽しみ!