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hontomo について

大阪府で小学校図書館司書をしています。学校司書歴7年目。1年目は右も左も分からず、2年目は読み聞かせに力を入れこの頃から個人的に読み聞かせのデータベースを作成をし始めました。3年目から勤めていた小学校・中学校の学校図書館改善に取り組み、サイト「ほんとも!〜学校図書館おたすけサイト〜」を立ち上げ。4年目以降は調べ学習に力を入れ始めました。その後異動し、現在の学校では1年生〜6年生を見通した調べ学習のカリキュラム・授業作りを研究中です。

トークセッション 「本+空間(hontasu 空間)Vo.1」に参加しました

先日(2014年10月11日土曜日)、奈良県立図書情報館にて
トークセッション 『本+空間(hontasu 空間)Vo.1』」というイベントに参加しました。

「本+(hontasu/ほんたす)」シリーズ第1回。ゲストは堀部篤史(恵文社一乗寺店長)+内沼晋太郎(ブックコーディネーター)+砂川昌広(とほん店主)。ユニークな店舗づくりをする書店の方々を迎え、「本のある空間」について考え、語り合います。

「本+(hontasu)」は、本を軸に、まつわる周辺にもまなざしを向けながら、それをめぐる世界を考えようというイベントプロジェクトです。イベントを通じて、単に本があるというだけではない、本と人や情報の集まる新たな“場”の可能性について考えます。

イベントは、図書情報館と図書情報館から生まれた活動コミュニティがともに、企画、運営しています。
(奈良県立図書情報館イベントページより引用)

当日はまず20分ずつ砂川さん、堀部さん、内沼さんの順にご自身のお店や活動の説明があり、
その後45分間のパネルディスカッション。
休憩を挟んで3グループに分かれてゲストの方を囲みグループセッションを25分×3回、
最後に質疑応答と全体セッションと盛りだくさんな内容でした。

ゲストお一人目の砂川昌広さんは奈良県大和郡山市にて
4坪の書店「とほん」を経営されている店主さん。

・とほんサイト
[browser-shot url=”http://www.to-hon.com/” width=”200″]

以前勤められていた書店が閉店した後、
奥様の地元大和郡山市にNPOの方の協力を得て「とほん」をオープン。
店の名前は「◯◯と本」から取っており、
様々なことと本が繋がるという意味とのこと。
お店の写真には訪問者が書いたらしき
「◯◯とほん」のメッセージボードが店内に飾られていました。
新刊に加え古本、雑貨の取り扱いもあります。
お店のある場所は創業400年の和菓子屋さんもある歴史の古い商店街。
地元で開かれるフリマ「ひとたらい市」に参加したり
他地域でのイベントにも出店したり、
地元に溶け込む姿勢が感じられる書店さんでした。
4坪の書店ということで本のチョイスが難しく感じられたのですが、
自分のこだわりや趣味を前面に押し出すのではなく、
ジャンルを狭めず偏らないように幅広く、
また流行の本の方が在庫リスクが高く長く売れる良い本を置いている、
というのが印象的でした。
大和郡山市には大型チェーン書店もあるのですが、
それぞれの店がその店なりの本を置いていて
「お客さんが本屋巡りできる」ようになれば良いと考えてらっしゃるそうです。
我が家から近いので、近いうちに訪れたいと思いました。

お二人目のゲスト堀部篤史さんは言わずと知れた
恵文社一乗寺店の店長さん。

・恵文社一乗寺店サイト
[browser-shot url=”http://www.keibunsha-books.com/” width=”200″]

私も何度か訪れたことがありますが、
棚作りに独特の哲学があり、例えば山登り・アウトドアの棚に

が混じっていたり、並んでいる本を見ているとそれだけで楽しく
新たな本との出会いがある書店です。
また、一緒に売られている雑貨や併設されているイベントスペース
COTTAGE」のイベントも魅力的なものが多いです。
お話で最も印象に残ったのは選書のこと。
著者と出版社と書影でその本を恵文社に置く本かどうか、
そして置いて売れるかどうかをかなりの高い確率で判断できるとのこと。
著者のこれまでの作品と出版社のこれまでの出版傾向が
それだけ「身に染み付いている」ということであり、
図書館員として見習わなければと痛感しました。
「恵文社一乗寺店」というお店のカラーと
来店されるお客様のニーズの摺り合わせ、
書店として本を売るという当然の目的を達成するために、
店のカラーとお客様のニーズと売上や出版傾向を
複合的に考えて選書されているその姿勢、
「時間は流れている」というスタンスで日々変化、
あるいは進化されているのが素晴らしく感じました。
堀部さんの書店や地域との関わりについては
こちらの本がさらに詳しいのでぜひご一読ください。

まさにタイトル通り、「左京区」という街のカラーを作り上げた小さな店たちの本。店の単なる紹介ではなく、それぞれの店主の店に対するこだわりや街の中での立ち位置、商売への思想を深く切り取りつつ、それらを繋ぎ合わせて左京区というひとつの街を物語るかのような内容。様々な小さな店が繋がり合うことで、左京区というコミュニティができつつあることが印象的。(ほんともレビュー)

最後のゲスト内沼晋太郎さんは
下北沢にある本屋さんB&B開業者であり、
また本屋ではないお店(服屋さんや雑貨屋さんやカフェなど)に設置する
本をセレクトする「ブックコーディネーター」。
そして本にまつわるノウハウとアイデアを繋げるNUMABOOKSの設立者でもあり
本にまつわる多様な活動をされています。

・B&B
[browser-shot url=”http://bookandbeer.com/” width=”200″]

・numabooksサイト
[browser-shot url=”http://numabooks.com/” width=”200″]

その活動や本に対する考えは

この本に詳述されています。

本というものの定義を紙の本や電子書籍だけに限らず幅広く捉え、なおかつその「本」の可能性、そして「本屋」の可能性を探る著作。出版・書店業界の現状とその問題点を指摘しつつ、しかし「本」と「本屋」にはまだただ未来の楽しみがある。そんな視点で著者ご自身の活動や他の様々な「本」と「本屋」にまつわる活動を紹介して、二つの未来を探っています。(ほんともレビュー)

文庫本葉書」(その本の一節が書かれた封筒に本を密封、どんな本かはわからない)や
その人のおすすめの本(同じくどんな本かわからない)を顔写真と氏名・出身地だけで選ぶという本の売り方の紹介がありましたが、
本を匿名にすることで本選びの悩ましさを軽減しつつ新たな楽しい本選びを創り出していて、
非常に考えられたアイデアだと感じました。
また、B&Bの特徴である「ビールが飲める」「家具も買える」「毎日イベントをする」の三点が
本屋の収入源を支えつつ本屋というものの弱点を補っている話から、
当日内沼さんの口から出た「常に課題意識を持っていること」という姿勢で
本や本屋が持つ課題・弱点を新たな発想で解決していくこと、
そのために日々様々なもの・ことをご自身の中に
積み重ねられていっているのが印象的でした。
「本屋はメディア」という言葉に関してグループトークでお聞きしたのですが、
「本屋は究極の食中花、街の知的好奇心の中心」とのお答え。
また、それまで本屋は本を置いているだけで売れていたのがそうでなくなり、
本に対してのニーズが実用性から知識を刺激するものに変化していること、
その上で本屋自身の個性化が大切だとご説明いただきました。
また、B&Bでは本それ自体だけで本なのではなく、
「本+イベント」で本になっている、というのも印象に残りました。

以上のようなご自身のお店や活動のお話の後
パネルディスカッションやグループトークでも
さらに踏み込んだお話をお聞きすることができたのですが、
ゲストの三者から共通して感じられたのは、
自分たちは「書店をやっている」という矜持を持ちつつ
書店であり続ける、書店を維持していくために
常に日々書店の仕事に挑んでいること、
「自分」を全面に押し出すのではなく周囲の状況や
今ある課題などを分析して自分の仕事を創り上げていっていること。
図書館的には「成長する有機体」と言えそうです。

また、同じく共通するのは「本だけではもはや街の書店は成り立たない」ということ。
街の小さな書店がほとんど見かけられないことからも
既にわかりきっていることではあるのですが、
一方で「どうして本を売るだけで書店が成り立たないのか」
という問題点が本にまつわる業界の共通課題のように思えました。

加えて、個人的にこういった図書館が主ではないイベントに参加すると
いつも私は「図書館員としてこの問題はどう自分に関わるか」
「経済的苦境にある地方に住む人間として、同じことが言えるのか?」
ということを考えます。
今回は図書館員としてこの日お話をされた方々の
「街の書店」の選書に学ぶべき点が多々ありつつも、
図書館というものの役割を考えると全く同じ論理では選書できないこと、
また図書館が生き残っていく上で図書館というものの弱点をもっと考えて
図書館の生き残り策をその弱点から何か発想しなければならないなということ、
そして私が住んでいる地方や他の地方でもしこのような書店をオープンするとしたら…
地域性や他書店のマーケティングや新しい働き方など色々と想像が膨らみました。

今回のイベントファシリテーターは
aun creative firmアートディレクター/デザイナーの森口耕次さんと
RISSIINC.ディレクターの松村倫也さん。

・aun creative firm
[browser-shot url=”http://a-un.net/” width=”200″] ・RISSIINC.
[browser-shot url=”http://www.rissiinc.jp/” width=”200″]

おふたりとも時間通りの進行をしつつ、
パネルディスカッションや全体セッションで
聴き手が更に深く聴きたいと思うことを的確に質問されていました。
このイベントを企画・運営してくださり、
参加の機会をいただき大変ありがたく思います。

また、イベント会場の奈良県立図書情報館を
イベント後見学させていただいたのですが、
「情報館」にふさわしくクリエイティブスペースや研究スペースが多々あり、
今回のように図書館に囚われない幅広いイベントを開催されており、
今後の「本+」のイベントも大変楽しみです。
また参加したく思います。
奈良県立図書情報館のイベント開催に関する趣旨については、
情報館の乾聰一郎のインタビュー記事「いかしごと」をご覧ください。
こちらも「働く」ということに関しての非常に興味深いお話です。

・いかしごと 求める人たちのことばかり考えて仕事をするのは、おかしいと思う。奈良県立図書情報館乾聰一郎インタビュー:前編
・いかしごと 自分にあった仕事なんてありえない。奈良県立図書情報館乾聰一郎 インタビュー:後編

会場に付いてプログラムを見た時に「おぉ、これは予想よりも濃いイベントだ…」と感じたのですが、
その通りに大変考えさせられることや発見の多いイベントでした。
あつかましくも打ち上げにも参加させていただき、
大変充実じた時間を過ごさせていただきました。
ゲストの皆様、企画運営に携われた皆様、ありがとうございました。


「学校司書資格」に必要な科目検討

※この記事は日本図書館研究会図書館教育研究部会例会のための記事です
なお部会所属の皆様はコメント等で本名を記載されないようお願い致します

学校司書が法制化されたましたが、
今後さらに学校司書資格が制定されたと仮定して、
これまでの自分の学校司書経験から必要と思われる科目を
司書資格・司書教諭免許・教員養成課程を参考にしつつ考えてみました。
SLiiiCのサマーワークキャンプで講師をする際に、
話のネタが無くなったら出そうと考えて作っていました。

まず科目名をざっと挙げてみます。
科目名等は司書・司書教諭・教員の科目から流用しています。
【司書】は司書講習と同じ科目で主に図書館全般に関する科目、
【司教】は司書教諭講習と同じ科目で学校図書館に関する科目、
【教員】は教員養成課程と同じ科目で教育学に関する科目
【学司】は学校司書独自の科目です。
(  )は単位数と必修・選択です。
リスト作成の説明はのちほどにして、先に科目名を挙げておきます。

【司書】・生涯学習概論(2・必修)
【司書】・図書館概論(2・必修)
【司書】・図書館情報技術論(2・必修)
【司書】・図書館サービス概論(2・必修)
【司書】・図書館情報資源概論(2・必修)
【司書】・情報資源組織論(2・必修)
【司書】・情報資源組織演習(2・必修)
【司教】・学校経営と学校図書館(2・必修)
【司教】・学習指導と学校図書館(2・必修)
【司教】・読書と豊かな人間性(2・必修)
【教員】・教育原理(2・必修)
【教員】・特別支援教育(2・必修)
【教員】・生徒指導論(2・必修)
【教員】・教育心理学(2・必修)
【教員】・特別活動(2・必修)
【学司】・学校図書館概論(2・必修)
【学司】・学校図書館サービス論(2・必修)
【学司】・学校図書館サービス演習(2・必修)
【学司】・学校図書館実習(1・選択)
【学司】・学校図書館設備論(1・選択)
【学司】・学校図書館制度・学校図書館史(1・選択)
【学司】・学校図書館基礎特論(1・選択)
【学司】・学校図書館サービス特論(1・選択)
【学司】・学校図書館情報資源特論(1・選択)
【学司】・学校図書館総合演習(1・選択)

総単位数:20科目38単位(選択からは2科目以上選択)

ちなみに、司書資格は13科目24単位なので
司書資格よりも科目・単位数ともに多くなっています。

・文部科学省「司書資格取得のために大学において履修すべき図書館に関する科目一覧」※PDFファイル

このリストを作るために、まず学校司書の業務や
学校司書として持ちあわせておくべき知識や専門性を
リストアップしました。
そのリストがこちら。

1.発注、受入、目録
2.レファレンス
3.貸出・返却、予約、リクエスト、督促
4.相互貸借
5.選書
6.目録・資料厚生
7.情報処理・情報技術
8.図書館運営計画作成
9.図書館精度・図書館政策
10.学校図書館教育計画(カリキュラム)作成
11.学校図書館教育研究
12.学校図書館組織
13.学校図書館資料論(蔵書構築、資料保存含む)
14.教職員レファレンスサービス
15.児童レファレンスサービス
16.広報活動
17.読書指導
18.学校図書館間連携
19.公共図書館連携
20.オリエンテーション(児童・教職員向け)
21.図書館デザイン(レイアウト、建築、サインなど)
22.地域・他機関連携
23.図書委員会活動
24.学校図書館史
25.学校図書館制度・政策
26.学校図書館実習
27.基本的な教育学(教育原理)
28.特別支援教育
29.生徒指導(生徒相談含む)
30.学校組織
31.課程対応
32.進路相談
33.児童心理学・教育心理学
34.教育政策

この34の項目と司書・司書教諭・教員それぞれの講習・養成課程で
必要な科目・学ぶ科目とを対比し、
それぞれの項目がどの科目に当たりそうか(カバーできそうか)を検討し
足りない項目は新たに科目を作成してリストに入れました。
詳しくは対応表のExcelファイルを見ていただけるとわかるかと思います。

catch003

Excelファイルが見られない方のためにPDFファイルはこちら

catch001

「学校司書がこの科目を学ぶ必要があるのか?」
「学校司書はこんなこともするのか?」
という賛否両論があろうかとは思いますが、
そういった科目は大抵

「学校司書としてこれまで勤務してきた中で
学んでいなくて苦労した、学んでおきたかった科目」

です。
色々ご意見等があるかとは思いますが、
考えるヒントとしてご笑覧いただければと思います。


1年生の「読書の練習(仮題)」

お久しぶりです、ほんともです。
今年度から卒業研究にまた取り組んだり
色んな研修会に参加したりと忙しく更新をサボっておりました…
2学期は少し仕事も落ち着きそうなのでちょくちょく更新したいと思います。

さて、今回は1年生の「読書の練習(仮題)」についてです
(良い名前が思い浮かびません、何かもっと良い名前があればいいのですが)。
「読書の練習」と書くといかがわしい感じがしてしまいますね。

内容は、

(1)図書館に来て本を返して借りる
(2)廊下に並んで全員一緒に教室に戻る
(3)教室で各自椅子に座り授業の趣旨を説明
(4)読む様子を見ながら苦手な子を担任・司書がフォロー

というものです。
1年生の図書の時間に行いました。
「どこかで見たような…」とお思いの方がいらっしゃるかと思いますが、
島根県松江市(旧出雲町)の揖屋小学校の実践を真似たものです。

揖屋小学校の実践では(うろ覚えですが)
朝の読書の時間に行い、
本は物語の本で教科書と同じ書体の本を用意し、
担任・司書教諭・学校司書の3人の先生が入って
行うというものでした
(すみません、うろ覚えですので間違いがあるかもしれません)。

本校は朝の読書の時間がクラスの裁量で行われているので、
図書の時間に行うこととしました。
また、読む本は図書館で借りた本でも良いし、
司書がブックトラックに載せた本でも良い、としました。
ただし、間違い探し絵本やなぞなぞの絵本、
マンガや絵しかない絵本などは読んではいけないこととしました。
また、本校では物語に限らず絵本(少し長めのもの)や
他の類の1年生が読めそうな本も準備し、
本の難易度も簡単なものから少し難しい物までそろえました。
書体に関しては手書きやポップな書体のものは避けました。
以下、実践してみてわかったことです。

(1)図書館で行うよりも教室で行う方が良い
本校は図書館にクラス全員分の座席が無いので
必然的に教室でする選択肢しかありませんでした。
教室から図書館に移動する手間と時間が
もったいないように思われましたが、
図書館で読みたい本を選べるし、
本を貸し借りして移動する時間を差し引いた残り25分ほどが
1年生が集中して本を読める限界ちょうどくらいで、
時間的には問題ありませんでした。
また、図書館に座席がクラス全員分あったとしても
教室で行った方が良いように感じました。
図書館の座席は大抵4人掛けだと思いますが、
4人掛けだと苦手な子をフォローする際に他の子の気が散る、
教室の1人掛けだと真横について集中してフォローしやすい、
また教室だと机間移動がしやすく全体を見てまわりやすいと感じました。

(2)本は幅広く揃えた方が良い
1年生が選んでいる本を見ると、
ほとんどは絵本や物語の本で、
一部の生き物好きの子は生き物の本を選ばない、という状況でした。
1年生の時点で既に本の選択に偏りが見られます。
しかし調べ学習を今後行うことを考えると、
幅広い本を準備し教える側から幅広い本を読むように
働きかける必要があります。
また、そのような本の魅力を伝えるのが学校司書の役割であり、
様々な本を知り子どもたちが魅力的に感じるような
紹介の手法を身につけておく必要があるように思います。

(3)本の難易度も広く揃えた方が良い
子どもたちによって文章を読む力の差があるのは当然なのですが、
その差はかなり広いように感じました。
青い鳥文庫をすらすら読む子もいれば、
絵本の文字を追うので精一杯、という子もいます。
どの分類の本にしろ、子どもたちの幅広い読書力に
対応できるよう様々な難易度の本を準備する必要があります。

(4)絵本の文字の配置
絵本によっては文字の配置が上下左右に分かれているものがあり、
本を読むのに慣れない児童にはどこをどの順番で読めば良いのか
わかりにくいように見受けました。

(5)会話文について
本によっては会話文が「 」で区切られていないもの、
また逆に「 」で会話文ばかり続くものもあります。
会話文が「 」によって区別でき、
また会話文ばかりが続かないもののほうが
1年生には読みやすいように見受けました。

(6)オノマトペのみで場面を表現しているもの
作品名など具体例を挙げられればわかりやすいのですが…
物語の場面の様子をオノマトペ中心に表現しているもの、
例えば船が海からやってくる場面で
「ふねがどんぶらこぶら…。
 ちかづいてきます、どんぶらこぶら…。」
という風にオノマトペで簡略化して説明しているものは、
文字は追えるけれども意味を追いにくいように思いました。
しかし一方で「想像力を養う」面もあるので、
これはどちらが良いか判断に迷うところです。
ただ、読むのが苦手な子にはこのような本は
場面の意味や展開が読み取りにくく、
読みにくいように見受けられました。

(7)場面展開や文末表現
(6)にも通じるものがあるのですが、
説明が簡略で場面展開がわかりづらいものや、
文末表現が「…」になっていたり
体言止めになっていたりしている
複雑な表現のものも、読むのが苦手な子には
読みづらいように見受けました。

(8)物語・絵本以外の本がかえって読みやすい
(6)(7)を踏まえるとむしろ、
科学絵本などの方がむしろ子どもたちには
文章表現が単純で読みやすいのではと思いました。
実際、科学読物で漢字も交えた(ルビは振ってある)
字が細かく行間が狭く長い本を集中して読める子もいました。
ただ、同種の物語の本を今回は入れていなかったので
比較がまだ必要だし個人の読書力の違いもあるので
これも必ずしも正しいとは言えません。

(8)1年生が知らない単語が多いものは避ける
行事絵本など1年生が知らない単語が多く出てくる本は
読めても内容が理解できていないようでした。
また、後述しますが単語を知らないので
文字を追う際に文章の区切りが単語単位で捉えられず
読みにくいように見受けました。

(9)読むのが苦手な子は単語で区切って読まない
読むのが苦手な子は、ひらがなを1文字1文字追って、
1文字ずつ棒読みで読みあげていきます。
単語ごとに区切って読む、意味を捉えて読むというのできません。
まだひらがなを完璧に覚えていないというのが原因ですが、
そういった単語ごとに区切って読むというのを
どこかで教える必要があるように感じました。
例えば、電子黒板に文章を全く区切りや句読点を入れず表示して、
区切りや句読点を入れた文章を比較して、
文章は意味のある単語で区切って読むと読みやすいんだよ、
というような指導が必要なように思いました。
また、そいういった読むのが苦手な子も付き添って読み続ける内に
何度も出てくる単語はすらすら読めるようになったり、
後半は読むスピードが上がったりしていました。
集中して読むことによる効果が出ていました。

(10)楽しいという子もいれば疲れたという子もいる
終わったあと感想を聞いてみると「面白かった!」という声が
意外にも多く出てきました。
そしてもちろん、「疲れたー」という声もありました。
おおよそ25分ほどですが、
やはり集中して読むのは1年生には体力を使うように見受けられました。
私はこの授業をあと2、3回続けようかと考えていたのですが
担任の先生から「月に1回くらいすれば良さそうですね」と言われ、
確かにこれが毎回続くと1年生にはハードだなと考えを改めました。
ただ、このような読み方を普通の図書の時間にも心がけるようにし、
教室でも本を読む時間を空き時間等に取ってもらい、
定期的にこの「読書の練習(仮題)」時間を設けて
その度に読む本が多様になるよう指導したり
読む手法をレベルアップしていけば効果が期待できるように思います。

(11)事前に読むのが苦手な子を担任の先生と共有しておく
どの子が読むのが苦手か、というのは担任の先生が
普段の授業の様子からだいたい把握しています。
読むのが苦手なのはふたつのタイプがあり、
「集中力が続かない」タイプと、
「読むことそのものが苦手」タイプの2通りです。
どちらのタイプの子も事前に共有しておき、
それぞれのタイプに合った働きかけをする必要があります。
前者なら本をオススメするなどして飽きないように、
後者は付き添って一緒に読むのが効果的ですが、
他にも何か良い手法があるかもしれません。

やってみた結果以上のようなことがわかりました。
今後、内容や選書をブラッシュアップしていき
より効果的に行いたいと思います。
また、他にも何か良い手法などの情報をいただけましたら幸いです。


だって春だもん

つららから落ちるしずく、流れだす水、芽吹く木々…
春の訪れを感じさせるほんの小さな、
けど確かな春の兆候たちが、
美しい写真でその一瞬を切り取られています。
文章もそれほど変に色付けされておらず、
自然と読める文章になっています。
冬の終わりの頃に読みたい絵本です。


ツバメのたび―5000キロのかなたから―

だれかが僕を呼んでいる。行かなければ。
海を渡り、嵐を越え、彼方へ…

春になって日本にやってくるツバメ。
その壮大な旅をダイナミックなアングルで描いています。
文章がとてもシンプルで科学的な読み物というよりは物語的な絵本。
ちょっと退屈かな…?
ツバメの科学的な本と一緒に紹介すると良いかもしれません。


だってだってのおばああさん

おばあさんは98歳、おばあさんだから、
釣りに行ったりしません。
おばあさんらしく暮らしています。
ある日、おばあさんは99歳の誕生日を迎えました。
けど、誕生日ケーキのろうそくを猫に頼んだら、
5本しか用意できなくて、
おばあさんは5歳になりました(ここがすごい)。
すると、5歳になったおばあさんは…

年をとったら年寄りらしくせよという格言がありますが、
こういう歳をとったって元気で、
何事にも好奇心を持つのも良いじゃないか!と
心から思わせてくれる絵本です。


すてきなあまやどり

ぶたくんが雨の中を走って帰ってきました。
ヤギさんに雨宿りの話をしています。
あれ?雨宿りしてるのに、どうしてぶたくんは濡れてるの?
思わぬ楽しい雨宿りのお話もさることながら、
ラストのぶたくんが濡れて帰ってきた理由に
思わずほっこりしてしまうお話です♪


おじさんのかさ

おじさんは傘を持ち歩いてお散歩、
けれど、雨が降っても傘をさしません。
傘が大事だから濡らしたくないのです。
そんなおじさんが、公園で雨がふりだした時、
子どもたちが歌っている歌を聞いて…

雨の日はどうしても憂鬱になってしまいがちですが、
思わぬ雨の日の楽しみをおはなしにした絵本。
ちなみに、大型絵本もあるのでそちらでの読み聞かせも
きっと子どもたちは大いに楽しむでしょう。


あめふり

雨続きにうんざりのばばばあちゃん。
いつまで経っても雨は止みません。
どうやら、かみなりこぞうたちがいたずらに雨を降らせている模様。
ばばばあちゃん、とうとう我慢の限界!
雨はどんどん降ってきて洪水にまでなりますが、
ばばばあちゃんは構わず台所で何か作っている模様…
いったい今度はどんなものを創りだしちゃうんでしょう?

相変わらずのばばばあちゃんの手腕に笑ってしまう1冊、
雨の憂鬱な気分も吹き飛ばしてくれます。


あめふりのおおさわぎ

雨が降るとご機嫌斜めになる人も多いですね。
この絵本では雨の街で、ひとつのことがきっかけに
どんどんどんどん他の人が巻き添えになり、
街中大変な大騒ぎに…。
大騒ぎになっている様子が迫力ある絵から伝わってきます。
けどラストは…読んでのお楽しみ。