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hontomo について

大阪府で小学校図書館司書をしています。学校司書歴7年目。1年目は右も左も分からず、2年目は読み聞かせに力を入れこの頃から個人的に読み聞かせのデータベースを作成をし始めました。3年目から勤めていた小学校・中学校の学校図書館改善に取り組み、サイト「ほんとも!〜学校図書館おたすけサイト〜」を立ち上げ。4年目以降は調べ学習に力を入れ始めました。その後異動し、現在の学校では1年生〜6年生を見通した調べ学習のカリキュラム・授業作りを研究中です。

小学生新聞記事の保存と整理

みなさんの学校図書館に新聞はあるでしょうか?
小学校ならば小学生新聞、中学校ならば中学生新聞、高校ならば一般紙を置いているところも多いでしょうか。
農業高校や工業高校などであれば専門紙を置いているところもあるかもしれません。
ただ、実際には予算化されていない、あるいは予算が足りないなどを理由に実際には購入されていないところの方が多いかもしれません。

さて、その新聞記事はみなさんどのように活用されているでしょうか?
日頃児童・生徒が読むのはもちろんのこと、新聞は探究型学習の情報源として活用することもできます。
ただし、活用するためには活用できるような形での保存・整理の作業が必要です。
一般紙や専門誌ならば新聞社が提供しているデータベースがありますが、小学生新聞については新聞社はデータベースをほとんど提供していません。
そこで、今回は私の学校での新聞記事の保存・整理方法をご紹介します。

私の学校で取っている小学生新聞です。
パンチで穴を開け、穴の部分をホチキス止めして補強しています。
私の学校図書館では過去2ヶ月分の小学生新聞は新聞架に半月毎に綴じて保存し、それより以前のものは同じく半月ごとに綴紐で綴じて保存していたためです。
しかし、この「半月毎に綴紐で綴じて保存」という方法では活用など全くできません。
何月何日にどんな記事が載っていたかなど全く探しようがありませんし、例え探せたとしても半月毎の束から目的の日付の新聞を探し出して綴紐を外して、また戻して綴じて…などという作業は非効率です。
また、この「穴あけしてホチキス止めする」というやり方は後々大変な手間を増やしました…。
そもそも、過去2ヶ月分の新聞記事を新聞架で置いておくのもあまり意味は無いように思われました。
前日〜2ヶ月前の新聞記事を見返す児童はほぼ皆無です。一方、新聞は溜めてしまうとどうしても整理が億劫になりがちです。過去の新聞はせいぜい1週間分くらい置いておいて、それより前のものは随時後述の方法で毎日1日分ずつ整理していくほうが良いように思いました。

さて、前置きが長くなりましたがこの新聞記事の整理方法です。基本的にはスクラップとファイリングです。さきほどの写真の一面記事を保存していきます。

使う道具はラジオペンチ、カッターナイフ、ハサミ、B5より少し小さめに切った厚紙です。ただ、ラジオペンチは場合によっては不要です。

まず、ラジオペンチでホチキスを外していきます。この作業はかなり手間です。
私が自校の新聞の整理に取り掛かった時、新聞記事は過去5年分ほど溜まっていました。その全てを保存するわけではありませんが、それでも何百日分という新聞のホチキスを外すのにとてつもない時間がかかりました。新聞をスクラップで保存するのであれば、ホチキス止めはオススメしません。

ホチキスを外したら、次に一面記事だけを切り抜くために新聞の真ん中部分をカッターナイフで切っていきます。

一面だけを切り離しました。

次に、一面からさらに必要な記事だけを切り抜いていきます。丸々そのまま保存しても良いのですが、ファイリングする際に嵩張ってしまうので必要な部分だけにします。

このように記事のみを切り抜きますが、ただし日付がなるべくわかるように日付と何面かがわかる部分は残します。記事の場所などによってどうしても残せない場合は、ボールペン等で余白に年月日と何面かを書きます(朝夕刊があるばあいどちらなのかも)。これは、探究型学習等で引用する場合に必ず必要になるからです。

切り抜きが終わったら、ファイリングのために記事を折りたたんでいきます。折りたたむサイズは、書架に入るサイズのファイルの大きさに折りたたみます。ファイリングした新聞記事は新聞記事だけで固めて置くのではなく、各分類の本と一緒に置いた方がより活用されやすいからです。

今回はB5サイズに折りたたむのですが、この時に役立つのがB5サイズより少し小さめに切り抜いた厚紙です。写真のように、厚紙を記事の裏側にあてて折りたたんで行くと素早く折りたためます。また、ファイルに入れる際にファイルからはみ出さないように、目的のサイズより厚紙を少し小さめにしています。そうすると、ファイルのクリアポケットにすんなり入るからです。

下側を上に折りたたんで…

さらにB5サイズになるようサイドを折りたたみます。

B5より少し小さいサイズに折りたためました。なお、折りたたむ時はなるべく記事の見出しが見えるように、あるいは何の記事がパッと見てすぐにわかるように折ります。ファイルの中から目的の記事を素早く見つけられるようにするためです。

さて、スクラップまでで新聞記事の保存・整理の下準備が終わりました。ここからさらに、新聞記事が「活用されるように」もうひと工夫をしていきます。

Excelで保存した記事の簡単な目録を作成します。項目は

・No.=記事管理のための通し番号を各記事に付ける
・発行年月日
・新聞名
・記事名
・面数=記事が載っていた面の番号
・ジャンル
・備考

ジャンルについては各学校のカリキュラムや学校教育方針、学習指導要領によって変わると思います。私の学校では以下のような感じでした。

このジャンルについては随時再考していく必要があると思いますが、基本的には「出版物でカバーできないジャンル」「最新の情報が必要なジャンル」については特に保存の必要があるように思います。また、ジャンルに加えて「記事をいつまで保存するか」も毎年検討しなければなりません。本として既に出版されていれば記事の保存はほぼ必要ないかと思いますが、そうでない場合は、その記事は数年後、数十年後にどのような意味を持つか?ということを考えて保存するべきかどうかを決める必要があるように思います。

「備考」蘭は後で児童や学校司書が検索する際にその記事が見つけられやすいようなキーワードや入れておいた方が良いと思われるキーワードを入力していました。繰り返しになりますが保存した新聞記事は活用されないと意味がありません。「活用される」ためには、児童や生徒、あるいは後任の学校司書がその記事を探せるように、探しやすいようにしておく必要があります。児童や生徒、学校司書がその記事を探す際にどんなキーワードで探すか、あるいはどんな単元でその記事を活用するかなどを考えてキーワードを入力しておきます。実際にはジャンルでだいぶ記事は絞れると思いますし大抵見つけられると思うのですが、それでも念のためキーワードを付与しておきます。

さて、このExcelのデータですが、単に目録の役割だけを持っているわけではありません。

実は別シートにマクロを組んでいて、決められたセルに先程の記事のNo.を入力して印刷すると…

このように書誌情報が載ったB5サイズの紙が印刷されます。この紙を、

新聞記事をファイリングする際に記事と一緒に入れておきます。こうすることでふたつのメリットが生まれます。

(1)新聞記事を抜き取ったあと、元に戻す際に入れる場所がわかりやすくなる
(2)新聞記事を引用する際に書誌情報がわかりやすくなる

こうしておけばあとあと探究型学習で新聞記事を利用した際に片付けたりレポート等を書く場合に一手間ふた手間省くことができます。

最後に、ファイルに挟んで背に見出しを付けます。これを各分類の棚に置いておけば、探究型学習で本を探すのと同時に新聞記事も探すことができます。
新聞社の方がこの新聞記事の保存を取材に来られたのですが、何年も前に書いた過去の記事と最近の記事に繋がりができたり、全然違う記事と思っていたものが、図書館の分類によって記事に関連性が生まれている、と関心されていました

本当はこのあとさらに市全体の目録システムに登録して全市的に利用できるようにしたかったのですが、その際の目録の作成方法のルール決め等を提案しようかと思っていたところで退職と相成りました。

………ただ、この作業をしながら一方で「もっと効率的なやり方があるのではないか」という気がしないでもありません。

例えば、記事のデータはおそらく新聞社に残っているはずです。その記事をデータベース化すればこういった作業は不要になります。大人の新聞は既にデータベースがあり活用できるので、同じようなものを新聞社さんが用意してくれれば…おそらく採算が取れないのでしょうが。
また、この作業を1紙だけするのに関しても疑問がありました。小学生新聞は記事内容にそれほど差異はないかもしれませんが、それでもやはり複数の新聞記事を比較するために、1紙だけでなく数紙を保存し比較できるようにするのが理想かと思います。しかし、それだけの作業を図書の時間を週に何十時間もこなしながらというのは時間的に不可能です。学校図書館支援センターなどで一括して行うか、もしくは図書の時間も含め教員・司書教諭・学校司書がどのように情報教育や読書教育に関わるかを再考する必要があるように思いました。理想は各新聞社が協働で児童生徒向け新聞記事検索・比較データベースを作ってくれると良いのですが…

最後になりましたが、退職前に駆け込みで作った朝日小学生新聞の記事目録のExcelファイルを誰でも利用できるようにアップしています。ジャンルは上記のジャンルで、おおよそ2010年4月ごろ〜2016年3月31日を対象にしています。ファイリング用の書誌情報印刷機能もあります。よろしければご活用ください。

最後になりますが、退職直前に新聞整理を手伝ってくださった某学校司書さんに御礼申し上げます。一人では到底できませんでした…ありがとうございました!


学校司書を退職しました

お久しぶりの更新ですが、タイトルに驚かれた方が多いかと思います。

「ほんとも!〜学校図書館おたすけサイト〜」管理人の「ほんとも」は、このたび2016年3月31日をもって勤めていた市を退職いたしました。
4月1日からは一般企業で正社員として次の仕事が決まっています。
学校司書ではありません。
図書館関係の企業でもありません。
全くの異業種に転職することとなりました。

退職理由については、この3月31日までの職場、並びに次の職場に配慮して、ここには書きません。
また、そもそもここには書ききれないほど様々な理由があります(さほど大した理由でも無いとは思うのですが、どうしてもお聞きしたい方は一献傾けながらであればお話します、ノンアルコール可)。

偶然とは恐ろしいもので、私の転職に重なるように、Twitterにて次のようなふたつのハッシュタグが生まれました。

自分としては学校図書館を去ることにさほど未練は無いと思っていたのですが、それでも「#図書館やめたの私だ」を読みながら身につまされるような想いを抱き、同時に「#図書館に育てられたの私だ」のまとめを編集しながら、大学図書館の司書として、公共図書館の司書として、そして学校司書として10年間自分がしてきたことに少しでも意味があったように思うことができました。
この10年間でたくさんの方に過分な評価をいただき、学校司書として様々なことを経験させていただきました。
この10年間で私が最も幸福だったのは、学校司書として存分に仕事ができる学校、一緒に同じ思いで私とともに働いてくださった先生方や職員の方々、学校司書として育つ環境を与えてくれる自治体、そして何より拙い自分の仕事に存分に応えてくれて私自身にも学びを与えてくれた子どもたちに恵まれたことでした。

そして、「ほんとも」としてその活動を発信し、幸いにもたくさんの方にその活動を参考にしていただき、また、逆にたくさんの方に私自身も学ばせていただきました。
私にとってこの10年間は他の何にも代えがたい貴重な10年間でした。

その10年間の経験を「捨てる」ことに多少の迷いもありますし、ありがたいことに「もったいない」という言葉も色んな方からいただきました。
ただ、その経験はこの転職の際にも大いに役立ちましたし、この先もきっとこの経験は役に立つかと思います。
また、ありきたりな言い方ではありますが何かしらこれからも図書館に関われればとも思います。

この数週間のあいだ、何をするにも「これが最後になるかも」と思いながら学校司書として仕事をこなしました。

これが「最後の読み聞かせ」になるかも。

これが「最後の卒業式」になるかも。

これが「最後に歌う校歌」になるかも。

そう思いながらこの数週間を学校で過ごすのは、正直に言うととても辛いものがありました。
一方で、卒業する6年生たちに最後に読んだ旅立ちの絵本や、卒業式で歌う唄の歌詞が旅立つ自分を励ましてくれるように感じ、また、耳に入る音楽の歌詞や、ふと読んだエッセイの一文が、そして身近な人の言葉が、ざわつく自分の心を落ち着かせてくれました。
今はもう、次の職場でしっかり働けるように、本を読んで勉強しながら備えています。

学校司書としての仕事は今日で一区切りですが、このサイトはこのまま残せる間は残しておきます。
また、管理人が非常に不精だったが故に、「これはサイトに載せよう」と思いつつも載せられていないことがまだたくさんあります(サイト構成も少し見直したいと考えています)。
次の仕事を続けながら、少しずつそれらに取り掛かろうと思います。

最後に、このサイトを通じてWeb上で、あるいはリアルで繋がりを持つことができた皆さんに感謝申し上げます。
皆さんがいなければ、きっと自分だけではこのような経験は決してできなかったと思います。
本当に、ありがとうございました。

それではまた、どこかでお会いできれば幸いです。
ひとまず、さようなら。

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さむがりやのねこ

とってもさむがりやのねこは、寒さに耐え切れず南の国に向かいます。走っていくうちに体があたたかくなったねこは、途中お休みしますが…

さむがりやのねこの悲劇はかわいそうなものの、絵も猫が合う悲劇も面白すぎて大笑いしてしまします!寒い冬に笑いすぎて暑くなりそうな絵本です。


算数の天才なのに計算ができない男の子のはなし

マックスは算数なら誰にも負けないと思っていました。しかし、トベル先生が時計を使って誰が早く問題を解けるか競わせるようになってから、算数ができなくなってしまいました。ちゃんと勉強もして算数もできるはずなのに、簡単な九九がとけない、時計で測られると頭がフリーズしてしまう。とうとう算数のことでパパとママと一緒に学校にも呼び出されますが…

算数障害の男の子が主人公の絵本。絵本の本編だけでは少しわかりにくいのですが、解説には算数障害についての説明がありこちらで理解が深まります。解説を入れながら読むのが良いかと思います。何より、算数障害について大人がこの本をきっかけに知識を持ち、子どもたちに応じられるようにしたいですね。


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僕がまだ赤ちゃんに近い頃、おじいちゃんがまだ元気だった頃、僕とおじいちゃんはよく散歩に行きました。おじいちゃんと散歩に行くたびに、僕の世界はどんどん広がっていき、おじいちゃんは僕の心配ごとも「だいじょうぶだいじょうぶ」と言って和らげてくれました。

おじいちゃんという存在の大きさ、優しさを絵本にしたかのよう。散歩をする様子が描かれていますが、この散歩は広い世界へ踏み出すという意味に感じられます。広い世界での新たな出会いと不安、それをおじいちゃんと一緒に見つめることで成長する子ども。そして、その子が成長して…。高学年向けに敬老の日に読みたい絵本です。


こぶじいさま

昔々あるところにおおきなこぶのあるじいさまがいました。ある日じいさまはついつい山の深くまで木を切りに行ってしまい、帰れなくなってしまいました。しかたなくそこにあった山の神さまのお堂で眠っていると…

「こぶとりじいさん」の昔話。鬼たちが酒盛りし歌を唄って踊る様子には本来の鬼の怖さがあまり無く、一緒に最初のおじいさんが踊る様子もとても楽しげ。しかし踊りの節のところはどう読むか?読み手が悩むところです。松居直さんの再話と赤羽末吉さんの絵は、場面転換に合わせて文章がきちんと区切られており、絵はカラーとモノクロの絵が交互に続きます。不可思議なことが起こる場面ではモノクロになるようにしているのかな?淡い色遣いで、それでいて鬼やおじいさんたちの表情は豊かで、森の絵や墨絵がお話によく合っています。


ボクはじっとできない 自分で解決法をみつけたADHDの男の子のはなし

デイヴィッドはいつもゴールスキー先生に怒られてばかり。「集中しなさい」と言われた時、集中しないといけないのはわかっているのに、他のことを考えてしまうともうそのことしか考えられなくなってしまいます。何か思いついたことや気になったことがあったら試さずにはいられません。どうしてボクはじっとしていられないのだろう、どうすれば集中できるのだろう…。その解決方法を、デイヴィッド自身が自分で見つけだします。

ADHD(注意欠如・多動性障害)が主人公の絵本。子どもたちだけでなく、大人も理解を深められる絵本です。


ローラのすてきな耳

ローラは耳がよく聞こえません。友だちの声がよく聞こえなくて仲良く遊べなかったり、車が近づいて来ているのに気づかなくて危ないことも。けれど、そんなローラの耳を聞こえやすくする、すてきな耳をつけたら…

耳が聞こえにくい子どもが実際にどんなことに困っているのか、具体的に「こうしてくれたりいのに」というローラの解決策も描かれていて、「耳が聴こえない」「聞こえにくい」ということに対し理解が深まります。


なっちゃんの声 学校で話せない子どもたちの理解のために

場面緘黙(かんもく)についての絵本です。主人公のなっちゃんは、家では家族と声を出して話をすることができるのですが、学校ではどうしても声が出せません。そのため、クラスの子たちにもからかわれてしまいます。ある日、お母さんが学校に行った時に、クラスの子たちになっちゃんのことについて話をします。子どもたちはそこで初めて、なっちゃんのことを理解し、これまでの自分を見直しなっちゃんとの接し方を変えます。

巻末の解説では場面天目について詳しく書かれています。場面緘黙について子どもたちの理解を深めるのにも良く、場面緘黙に限らず気の弱い子や人前で話すのが苦手な子がクラスにいる場合にも読むと良さそうな絵本です。


ちいさなおおきなき

タイトルと表紙からだと優しいおはなしなのかな?と感じるのですが、中身は壮大で深く、考えさせられるお話です。小さな種から大きな木が育ち、その木に暮らす様々な生き物と、そして人間…。人間の愚かさを痛烈に描く絵本です。もう少し木の大きさが伝わる絵だったら…読み聞かせするには少し絵が細かいので、読む際に注意が必要です。