前回は「日本十進分類法 新訂10版について勉強しました 外見・中身編」と題して外見やコンテンツの変更について書きました。
今回はいよいよ分類方法などがどのように変わったかを書きます。
なお、説明のためページ番号を書く必要があるのですが、NDCは2冊にわかれているため、わかりやすいよう「本表・補助表編(第1分冊)」を1巻、「相関索引・使用法編(第2分冊)」を2巻とさせていただきます。
また、9版と10版の違いがわかりやすいよう、文字の色を9版の説明部分は茶色に、10版の説明部分は緑色にしています。
<改訂方針>
まず2004年に公表された10版の改訂方針について、1巻26pに記載されています
・NDCの根幹に関わる体系の変更はしない
・ただし「007 情報科学」と「548 情報工学」の統合の可能性を検討する
・書誌分類を目指す
・新主題の追加(件名標目表4版や国立国会図書館件名標目表、新刊書等を参考に)
・全般にわたって解説や分類項目名などの修正・追加(論理的不整合、時代の変化等に合わせて)
・分類典拠ファイルの作成
(※強調はほんともによる)
基本的には9版から大幅に分類体系の変更を加えることはなく、時代にマッチした改訂になっているようです。
1巻27pの「3.2 追加的対応」にもその旨の記述があります。
これは現状多くの図書館がNDC9版を使用しており、大幅な変更は影響が大きいことも考慮されているのかな、と思います。
<「007 情報科学」と「548 情報工学」の改訂>
「007 情報科学」と「548 情報工学」の統合については、「統合の可能性を検討する」と前述しましたが、結果的に
「記号的な統合よりも『概念(観点)の明確化』により区分する考え方に切り替えた」
となっています(1巻27pより)。
9版と10版を比較してみると、10版の007、548は項目名や注記が変更されている箇所が多く、新規追加項目も多くあります。
例えば、10版007では
「007.6355 書体[フォント]」
など今となっては当たり前の項目が多く追加されています。
また、9版では「582.33 ワードプロセッサー.タイプライター」にワープロ用ソフトウェアを収めていた(ただし別法で007に入れることはできた)のが10版では「007.638 文書作成ソフトウェア」に統合されさらにプレゼン用ソフトや表計算ソフトなど細かく分類されるようになっています。
一方、548も同じく情報工学の発展に合わせた追加・変更がされています。細かく挙げていくときりがないのですが、例えば9版では
「548.21 入力装置」
としか記述されていなかったものが、10版では
「548.21 入力装置:マウス、タッチパッド、トラックボール」
というように改訂され、さらに
「548.211 文字・画像入力」(キーボードやペンタブレットなど)
「548.212 映像入力」
「548.23 音声入力」
と細分化されています。
また、同じく「548.25 出力装置」が10版では「文字・画像出力」や「映像出力」や「音声出力」にさらに細分化されるなど、ともかく時代に合わせた改訂がなされています。
さらにこれら情報科学・情報工学で10版で大きく変更されたのは、「547.48 情報通信」と「548 情報工学」を別法で「007 情報学.情報科学」に収めることができるように明記されたことです。
9版では「007 情報科学」を別法で「548 情報工学」に別法で収められることは明記されていたのですが、その逆の「548 情報工学」を「007 情報科学」に収める別法は明記されていませんでした。
図書館としては情報に関する資料を0類・5類のどちらにも統一して分類しやすくなり、使いやすくなったのではと思います。また、007・548に限らずこのような使いやすい改訂が随所になされています(学校図書館に特に係る部分は次回の記事で触れます)。
<書誌分類を目指す>
実を言うと私は「書誌分類」という言葉をダイトケン合同例会まで知りませんでした。
「書誌分類」の説明の前に、まず「書架分類」を説明したほうがわかりやすいかもしれません。
「書架分類」は資料を書架に並べるために分類記号を「ひとつだけ」決める分類法です。排架のための分類であり、分類番号は短く簡潔、乱暴な言い方をすればおおざっぱな分類です。
一方、「書誌分類」は資料が持つ主題を詳細に分析し分類番号を付与します。詳細に主題を分析するため、分類番号は長く、また複数の分類番号を付与することもあります。
これは、排架のために分類番号を付与するのではなく「書誌」=本を探すための情報として分類を付与するためです。資料が多くの主題を持っていれば、分類番号も複数になります。
NDC10版は「書誌分類をめざす」(1巻26p「3.1 改訂方針」より)としており、本表・補助表編(第1分冊)の「序説」や相関索引・使用法編(第2分冊)の「使用方法」も書誌分類を前提に書かれています。特に「使用方法」の「1.1 書誌データの作成と分類作業」(2巻・266p)にはっきりと「主題要素各々に対応した複数の分類記号を積極的に付与(分類重出)することが望ましい」と書かれています。
<分類典拠ファイルの作成>
「典拠ファイル」とはごくごくおおざっぱに言えば、著者名や主題の統一型を記録したファイルのことです。書誌を作成する際に、作成者によって著者や主題がバラバラになったり間違ったりしないよう、この「典拠ファイル」から著者や主題をデートして引っ張りだしてきたり、資料検索でもこの典拠ファイルを用いて検索精度が上がるようにしています。
「分類典拠ファイル」とはつまり分類表の典拠ファイルであり、NDC9版ではすでにこの分類典拠ファイルである「NDC・MRDF9」(MRDFはmachine-readable data formatの略)が提供されています。
NDC10版でも同じく分類典拠ファイルとして「NDC・MRDF10」の作成・提供を計画されていましたが、10版出版までには間に合っていません(1巻30p「3.5 NDC・MRDF10の検討」より)。改訂作業の膨大さを考えると、これはしかたのないことだと思います。今後の提供が期待されますね。
この記事を書くにあたり、9版と10版の007・547・548を見比べる作業をしてみたのですが、その作業だけでも大変疲れました。0類〜9類を改訂する作業というのは、恐ろしい労力と疲労を伴ったと思います。改訂作業をされた皆様、本当にお疲れ様でした。
なお、改訂方針だけでこれだけの分量になってしまいましたので、NDC10版と学校図書館についての記事は次回「日本十進分類法新訂10版 学校図書館にどう関わってくる?」(タイトル予定)で書きたいと思います。
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