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サン・ジョルディの日に贈る絵本

あまり世間一般には知られていないかもしれませんが、毎年4月23日は「子ども読書の日」(4月23日〜5月12日はこどもの読書週間)であると同時に「世界図書・著作権デー(世界本の日)」でもあり、そして「サン・ジョルディの日」でもあります。

図書館や出版・書店・お花屋さん関係ではない方にはあまり馴染みが無いかもしれませんが、「サン・ジョルディの日」とは「親しい人に気持ちをこめて、本や花を贈り合うカタルーニャ伝統の日」です(日本・カタルーニャ友好親善協会サイトより)。元々は聖人サン・ジョルディが退治した竜の血からバラが咲いたことからバラを贈る日だったのですが、20世紀に入り本を贈るようになりました。カタルーニャでは男性がバラを贈り女性が本を贈ることが多いようですが、特にこだわり無く男女、友人同士、親子で本を贈ることもあるとのこと。

「人に本を贈るなんて、その人がどんな本を読んでいるかわからないと難しい、こんな本を贈っても好みじゃなかったら…」と思ってしまう方もいらっしゃるかもしれませんが、誰かが自分のためにじっくり悩んでこれだ!という1冊を贈ってくれれば、どんな本でも嬉しいものだと思います。みなさん、今年は誰かに本を贈ってはいかがでしょうか?

さて、以下はほんともオススメの、プレゼントにぴったりな絵本です。主に大人に贈る絵本を紹介します。

junaidaさんという画家さんの絵本です。絵本というより、画集に近いかもしれません。「家」をテーマに、見ていて思わず心温まるような絵がたくさん詰まっています。細部まで本当に細かく描かれていて、じっくり見ていると発見があり楽しいです。

同じくjunaidaさんの「HUG」という絵本。タイトル通り「ハグ」をテーマに、様々なハグが描かれています。しかし、単純に人と人同士がハグする絵ばかりではありません。1枚1枚、意味深なテーマがあるように感じます。

同じくjunaidaさんの「IHATOVO〈01〉」。宮沢賢治の作品の一節を抜き出し、その一節に時に幻想的な、時に楽しい絵を描かれています。宮沢賢治の珠玉の文章とjunaidaさんの絵が見事にマッチしています。ただ、漢字にルビが無いのでお子さんにプレゼントするのはちょっと向いてないかもしれません(よく本を読む小学校高学年の子ならば大丈夫だと思いますが)。

この本も実は文字がありません。デイヴィッド・ウィーズナーという作家さんの絵本ですが、絵だけでストーリーが展開していきます。エンパイアステートビルに登った少年が、不思議な友だちとの邂逅と別れ、そしてラストの夢が溢れでたかのようなワンシーンは思わず鳥肌が立ちます。伏線もあり、絵だけでこれだけの物語の展開があるのは素晴らしいです。

同じくデイヴィッド・ウィーズナーさんの文字なし絵本。海水浴をしていた少年が波に揉まれると、ふとひとつのカメラを拾い上げます。そのカメラに入っていた写真を現像してみると…。ちょっとSFチックな絵本です。

大道芸人であるフィリップ・プティ。彼の特技は綱渡りであり、ニューヨークのツインタワーを綱渡りするという壮大な挑戦をするお話です。しかし、彼は全く怖れません。何が彼を綱渡りに駆り立てるのか?ということを読み手に問いかける絵本です。ちなみにこの絵本は実話を元に書かれています。

卒業・3学期最後」の読み聞かせブックリストでも紹介していますが、この4月に異動や引っ越しで遠くに行った、あるいは就学や就職や転職という新たな門出を祝うのにぴったりの絵本です。

ある日、ひらがなの国の道端に落っこちていた濁点。そんな「読めもしない」珍事は、実は深い深い絶望から始まったもの。思わず唸ってしまう珠玉のストーリーです。

広告などでイラストを見たことがある方も多いのではないでしょうか?ヨシタケシンスケさんというイラストや造形芸術を中心に活動されている方の絵本。とても哲学的で大人も思わず考えこんでしまいます。

絵本ですが236ページもあります。自分自身のアイデンティティとは?これも哲学的な絵本です。実は学校でもよく借りていかれます。

ショートムービーで有名になりましたが、その映画を元にリメイク・描き下ろしされた絵本です。海面がどんどん上昇し、家が沈んでいく町。その町で、海面が上昇するたびに上へ上へと増築していく家に住むおじいさん。ある日、また家を建てようとした時に道具を下の家に落としてしまいます。道具を取りに潜ってみたおじいさんは、古い家を見て昔を思い出します。家族や故郷、人生のことを感じさせてくれる絵本です。

おじいちゃんからある日ネコの男の子のもとに「浮き輪」が贈られてきます。手紙には「次の満月にふくらませて」と書いてあります。言われたとおりふくらませてみると…。蜂飼耳さんの秘密めいた冒険の物語、けどどこか優しさも感じさせてくれます。その物語に牧野千穂さんの淡く優しいタッチの絵がぴったりです。

もしプレゼントする相手に最近赤ちゃんが生まれていたらぜひ贈りたい絵本。赤ちゃんへのお母さんの思いがたっぷり詰まった写真絵本です。

本好きな人にぜひ贈って欲しい本。「本と読む」ということそのものの意味が伝わってくるかのような絵本です。

キャンバスを前にして、筆が止まってしまった画家。愛車ルノーを走らせただひたすら進む先にあったのは古びたホテル。そこで画家は様々な人々と出会います。想像力とはいったい何なのか?どうやって取り戻せば良いのか?これぞまさに大人の絵本。

というわけで、かなり偏ったリストになりましたが(実際ほとんど自分の好きな絵本リストに近いです)、どれも大人が読んでも面白い絵本ですので、特にプレゼント関係無くとも読んでいただければ幸いです。


日本十進分類法 新訂10版について勉強しました 改訂方針編

前回は「日本十進分類法 新訂10版について勉強しました 外見・中身編」と題して外見やコンテンツの変更について書きました。
今回はいよいよ分類方法などがどのように変わったかを書きます。

なお、説明のためページ番号を書く必要があるのですが、NDCは2冊にわかれているため、わかりやすいよう「本表・補助表編(第1分冊)」を1巻、「相関索引・使用法編(第2分冊)」を2巻とさせていただきます。
また、9版と10版の違いがわかりやすいよう、文字の色を9版の説明部分は茶色に、10版の説明部分は緑色にしています。

<改訂方針>
まず2004年に公表された10版の改訂方針について、1巻26pに記載されています

・NDCの根幹に関わる体系の変更はしない
・ただし「007 情報科学」と「548 情報工学」の統合の可能性を検討する
書誌分類を目指す
・新主題の追加(件名標目表4版や国立国会図書館件名標目表、新刊書等を参考に)
・全般にわたって解説や分類項目名などの修正・追加(論理的不整合、時代の変化等に合わせて)
・分類典拠ファイルの作成
(※強調はほんともによる)

基本的には9版から大幅に分類体系の変更を加えることはなく、時代にマッチした改訂になっているようです。
1巻27pの「3.2 追加的対応」にもその旨の記述があります。
これは現状多くの図書館がNDC9版を使用しており、大幅な変更は影響が大きいことも考慮されているのかな、と思います。

<「007 情報科学」と「548 情報工学」の改訂>
「007 情報科学」と「548 情報工学」の統合については、「統合の可能性を検討する」と前述しましたが、結果的に

「記号的な統合よりも『概念(観点)の明確化』により区分する考え方に切り替えた」

となっています(1巻27pより)。
9版と10版を比較してみると、10版の007、548は項目名や注記が変更されている箇所が多く、新規追加項目も多くあります。
例えば、10版007では

「007.6355 書体[フォント]」

など今となっては当たり前の項目が多く追加されています。
また、9版では「582.33 ワードプロセッサー.タイプライター」にワープロ用ソフトウェアを収めていた(ただし別法で007に入れることはできた)のが10版では「007.638 文書作成ソフトウェア」に統合されさらにプレゼン用ソフトや表計算ソフトなど細かく分類されるようになっています。

一方、548も同じく情報工学の発展に合わせた追加・変更がされています。細かく挙げていくときりがないのですが、例えば9版では

「548.21 入力装置」

としか記述されていなかったものが、10版では

「548.21 入力装置:マウス、タッチパッド、トラックボール」

というように改訂され、さらに

「548.211 文字・画像入力」(キーボードやペンタブレットなど)
「548.212 映像入力」
「548.23 音声入力」

と細分化されています。
また、同じく「548.25 出力装置」10版では「文字・画像出力」や「映像出力」や「音声出力」にさらに細分化されるなど、ともかく時代に合わせた改訂がなされています。

さらにこれら情報科学・情報工学で10版で大きく変更されたのは、「547.48 情報通信」と「548 情報工学」を別法で「007 情報学.情報科学」に収めることができるように明記されたことです。
9版では「007 情報科学」を別法で「548 情報工学」に別法で収められることは明記されていたのですが、その逆の「548 情報工学」を「007 情報科学」に収める別法は明記されていませんでした。
図書館としては情報に関する資料を0類・5類のどちらにも統一して分類しやすくなり、使いやすくなったのではと思います。また、007・548に限らずこのような使いやすい改訂が随所になされています(学校図書館に特に係る部分は次回の記事で触れます)。

<書誌分類を目指す>
実を言うと私は「書誌分類」という言葉をダイトケン合同例会まで知りませんでした。
「書誌分類」の説明の前に、まず「書架分類」を説明したほうがわかりやすいかもしれません。
「書架分類」は資料を書架に並べるために分類記号を「ひとつだけ」決める分類法です。排架のための分類であり、分類番号は短く簡潔、乱暴な言い方をすればおおざっぱな分類です。
一方、「書誌分類」は資料が持つ主題を詳細に分析し分類番号を付与します。詳細に主題を分析するため、分類番号は長く、また複数の分類番号を付与することもあります。
これは、排架のために分類番号を付与するのではなく「書誌」=本を探すための情報として分類を付与するためです。資料が多くの主題を持っていれば、分類番号も複数になります。

NDC10版は「書誌分類をめざす」(1巻26p「3.1 改訂方針」より)としており、本表・補助表編(第1分冊)の「序説」や相関索引・使用法編(第2分冊)の「使用方法」も書誌分類を前提に書かれています。特に「使用方法」の「1.1 書誌データの作成と分類作業」(2巻・266p)にはっきりと「主題要素各々に対応した複数の分類記号を積極的に付与(分類重出)することが望ましい」と書かれています。

<分類典拠ファイルの作成>
「典拠ファイル」とはごくごくおおざっぱに言えば、著者名や主題の統一型を記録したファイルのことです。書誌を作成する際に、作成者によって著者や主題がバラバラになったり間違ったりしないよう、この「典拠ファイル」から著者や主題をデートして引っ張りだしてきたり、資料検索でもこの典拠ファイルを用いて検索精度が上がるようにしています。
「分類典拠ファイル」とはつまり分類表の典拠ファイルであり、NDC9版ではすでにこの分類典拠ファイルである「NDC・MRDF9」(MRDFはmachine-readable data formatの略)が提供されています
NDC10版でも同じく分類典拠ファイルとして「NDC・MRDF10」の作成・提供を計画されていましたが、10版出版までには間に合っていません(1巻30p「3.5 NDC・MRDF10の検討」より)。改訂作業の膨大さを考えると、これはしかたのないことだと思います。今後の提供が期待されますね。

この記事を書くにあたり、9版と10版の007・547・548を見比べる作業をしてみたのですが、その作業だけでも大変疲れました。0類〜9類を改訂する作業というのは、恐ろしい労力と疲労を伴ったと思います。改訂作業をされた皆様、本当にお疲れ様でした。
なお、改訂方針だけでこれだけの分量になってしまいましたので、NDC10版と学校図書館についての記事は次回「日本十進分類法新訂10版 学校図書館にどう関わってくる?」(タイトル予定)で書きたいと思います。


日本十進分類法 新訂10版について勉強しました 外見・中身編

「日本十進分類法 新訂10版」(以下NDC10)が刊行されました。

・日本十進分類法 新訂10版
(日本図書館協会通販ページリンク)

9版の刊行が1995年8月、新訂10版は2014年12月なので実に約20年ぶりの改訂です。
この刊行に伴い関西では新訂10版に関する研修・研究会が開催されました。

・大図研近畿3支部合同例会「日本十進分類法新訂10版の全貌」
・日本図書館研究会 図書館学教育研究グループ例会「NDC10をどう教えるか」

このどちらにも参加させていただきましたので、簡単な新訂10版の改訂についてと、学校司書として今回の改訂が学校図書館にどのように影響するかなどを書いていきます。
なお、特に前者のダイトケン研修会では改訂に携われた藤倉恵一様ご自身にご解説いただき大変勉強になりました。
改めて感謝申し上げますとともに、この記事は藤倉様の解説を中心に書いております。

<改訂作業について>
改訂にはのべ17名の方が携わり、刊行直前まで改訂作業が行われていました(刊行後も訂正箇所等のために作業が続けられています)。
これだけの改訂には大変な労力なだけでなく、神経を擦り減らすような緻密さも求められるかと思います。
改訂をしてくださった日本図書館協会分類委員会の皆様、本当にお疲れ様でした。
改訂に携われた委員の皆様は普段大学図書館や公共図書館等で通常業務をこなしつつ、プライベートな時間も削って改訂作業をされていたとのこと。
個人的にはこの仕組みは委員の皆様に負担が大きすぎるように思います。
改訂作業は図書館界全体に関わる作業であり、勤務時間中にもっと改訂作業に関われるような仕組みづくりが必要なように感じました。

<外見的な改訂について>
既にNDC10を手に取られた方はわかるかと思いますが、9版と目に見えて大きな違いは

・A5判→B5判

に変わったことかと思います。
これは、A5判サイズで改訂するとページ数増に伴い1cm近く厚みが増してしまうためです。
個人的には、ページが大きくとても見やすくて良いです。
また、「日本目録規則」や「基本件名標目表」とサイズを合わせるためでもあります。
他の外見的な変化は、

・表紙が茶色→黒色
・背の♦が第1分冊(本表・補助表編)が♦ひとつ、第2分冊(相関索引・使用法編)が♦ふたつになっている
・バーコード貼付を考慮し表紙のエンボス加工を左下から右上に
・つめ(小口見出し)が9版では相関索引のみだったのが、両方につけられた
・分類番号と項目の間のスペースが全角になり見やすく
・中間見出しや網レベルの分類がくるときに改ページ(大事な注記や見出しがページをまたぐことを抑止)
・本表と相関索引で厚みが異なり、触っただけでも区別がつきやすい。
・9版解説ページに使われていたローマ数字をやめる(司書課程等の授業でページ番号を教えにくい)

という風に、細部も使いやすいように変更されています。
本当に細かいところまで使う人への気遣いが行き届いているように感じました。

<中身の変更・追加点>
分類以外のコンテンツの変更点も多々あります。

・分類そのものについての解説の「序説」の追加
・「使用方法」及び分類をする上で重要な「用語解説」追加
・序説、使用法、用語解説、判例に使われている用語が
 どのページに有るかの「事項索引」の追加

9版では「解説」で一括りにされていたものがよりわかりやすいように変更・追加されています。
ただ、自分の勉強不足ではあるのですが用語解説はもっとわかりやすい説明を…という用語がいくつかあります。
ただ、ここの部分をもっと充実させてページ数を増やすのはNDC10の本来の目的ではないので、わからない用語は他の本で勉強を、ということでしょう。

長くなったので、次回「日本十進分類法 新訂10版について勉強しました 改訂方針編」に続きます。