2013年11月3日に行われた、
「中等教育における卒業研究カリキュラム:学校図書館サービスを視野に入れて」
公開研究会に参加してきました。
主催は東京大学大学院教育学研究科「イノベーション科研」。
内容は下記リンク先に詳しく載っています。
公開研究会
中等教育における卒業研究カリキュラム:学校図書館サービスを視野に入れて
http://panflute.p.u-tokyo.ac.jp/sotsukenpj.html
公開研究会の趣旨は
現学習指導要領で一定の位置づけがある探究型学習の総仕上げとして,「卒業研究」を行う学校があることが知られています。本研究会は,学習の総仕上げとしての卒業研究を中心にして,学校の探究型学習の位置づけ,指導方法,評価法,進学や就職との関係,そして学校図書館サービスの支援を現場の先生方や職員の方とともに総合的に検討します。その議事録を作成し、上記科研の報告書とする予定です。
となっていました。
午前中の市川伸一・東京大学大学院教育学研究科教授の講演と
根本彰・東京大学大学院教育学研究科教授の基調報告では
それぞれの演題通り、探究型学習がどのように位置づけられているか、
日本の教育環境の推移や現状の観点から述べられていました。
市川教授のお話で特に印象に残ったのは、
「基礎学力がベースにある上で探究型学習が成り立つ」ということ。
卒業研究は情報活用スキルなども必要ですが、
何より文章やデータを読み解く力が必要であり、
基礎学力をしっかり育てておかなければ
卒業研究の実践は難しいと感じました。
また、根本教授のお話では
「大学の卒業論文=学術論文と卒業研究は異なる」ということに
考えさせられるものがありました。
当日分科会などでも議論されたのですが、
卒業研究の評価という点で、
果たしてどこまでのクオリティのものを求めるのか。
昨年度の実践を振り返り、自分は子どもたちに
高いクオリティを求めすぎたのかな…と反省しつつ、
卒業研究の完成度にどうやってラインを引くのか、
次にもし取り組む場合最初に考えておかなければならないと感じました。
午後は参加者を3グループに分けて
(司会・午前の講演者・報告者含め1グループ約20名)で
分科会を開き卒業研究について議論しました。
自分の参加した分科会では主に
卒業研究を取り組む上での学校の組織体制、
卒業研究の評価について議論されました。
卒業研究(またはそれに類するもの)に取り組んでいる学校が
多かったのが自分には意外だったのですが、
どの学校も組織的に行うことの難しさ、
評価方法を共有することの難しさをおっしゃっていました。
取り組んでいる学校はほとんどが高校だったのですが、
高校では「学校設定科目」を設けて実施してる学校が多かったです。
司書教諭などの先生が指導している学校もあれば、
指導時間をほとんど設けず全教員で取り組んでいる学校もあり、
小学校とは取り組み方がかなり異なるのにも目から鱗が落ちました。
公立小学校では年度をまたいで取り組むのが難しいのですが、
何か解決方法は無いものかと考えさせられました。
今回は卒業研究の指導方法や学校図書館の関わり方については
あまり議論されなかったのですが、
東大附属学校卒業生による卒業研究に取り組んだ経験の発表と、
分科会でも卒業生が参加していてどのように指導されたかをお聞きして、
卒業生たちのお話がかなり参考になりました。
東大附属学校では高1・高2で卒業研究に取り組んでおり、
それまでに論文の書き方、レポートの作成の仕方などが指導されており、
昨年の実践で自分の取り組みに抜けていた点が多々あったことに気付き猛省…
また、卒業生の発表で「先行研究をしっかりチェックすること」というのが
小学校で卒業研究を実践する上でかなりキーポイントになるのでは、
と感じました。
小学校で卒業研究を実践する上で昨年度最も難しかったのは
「子どもが自分で決めたテーマ・問いについて、
子どもが自分の力で取り組めるかどうか
どのように基準を設けて線引するか」
です。
この「線引の基準」を昨年度は明確にできず、
難しいテーマ・問いに陥ってしまった児童が多くいました。
特に困ったのが「そのテーマ・問いの児童書が無い」ケースで、
難しい大人の本を読まなければならない、
インターネットから写すだけで終わる、ということが多々ありました。
この「テーマ・問いの難易度の線引」を
「児童書があるかどうか」という基準で行い、
テーマ決定、問い立ての段階で指導するのが良いように感じました。
また、昨年度は
テーマ決定→百科事典等で基本を調べる→問いを立てる
という流れで行いましたが、
テーマ決定→先行研究=テーマに関する児童書を読む→問いを立てる
という手順で行うのも良いように思いました。
というわけで、以上散漫ではありますが参加報告です。
最近、先生には、課題を決めて本を探すのもよいですが、該当する本がない時は、ある本で書けそうなと思ったら、課題の方を変えるようご指導下さいとお願いしています。小学校の低学年、中学年ではまずは情報を読み解く訓練が大事なのではないかという提案です。
初めまして。
北海道の小さな町の図書館類似施設で司書をしています。
学校図書館派遣事業のなかで、学校図書館の機能向上を目標に活動をしています。
この活動のために司書教諭もとりました。
調べ学習を支援することがありますが、
3年生は元々の基礎知識が少ないなか、自由にテーマを決めると、まずその基礎知識を得ることが難しい物であったりして、という実態を私も経験して、先に学年に合った資料を読ませる、そこから、へ〜って子どもが思ったところを逆に問いの形にさせて、レポートを完成させる、という方法もあるんじゃないかと、担任の先生に提案したところでしたので、こちら読んで、そうそう、って思いました。
光村の3年生の国語で、「本で調べてほうこくしよう」という単元で感じたことでした。
>>wakabayasi yumikoさん
初めまして。東京書籍でも「研究レポートを書こう」という単元があります。この単元で肝心なのは「研究」というものの流れを知ることと、図書館の中から自分の必要な本を探し出すこと、本で調べたことと自分の意見を区別して書くこと、著作権や引用について知ることだと思います。その上で課題設定を子どもがする際には「図書館の本で調べられそうなこと」という事前説明を子どもたちにする必要があると思います。資料を読んでから問いの形を作るのも手かと思いますが、小学校6年間のどこかで問いを作る経験は絶対にしなければなりません。それなら、3年生という早い段階で経験しておくほうが良いのでは、と思います。その際、具体的に問いを例示してあげたり、子どもたちひとりひとりの問いを教師側でチェクして、「図書館の本で調べられるかどうか」という基準で微修正してあげる必要があるかと思います。
>>中山先生
仰るとおり、低・中ではなおさら子どもにとって「調べられるテーマ」を判断して決めるのが難しいので、教師側からの指導が必要かと思います。また、情報を読み解くのにも資料を手渡すだけでなく、「読み方」の指導も必要なように思います(具体的にどんな指導が必要かはまだわからないのですが…)。加えて、それらを支えるための資料の充実も欠かせませんね。